日本一速い男、星野一義の副業ビジネス成功例 創業40年以上、インパル創業から現在と未来

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その他の業務についても、星野氏は、「今は一歩引いて、若い人たちに任せている。餅は餅屋、それぞれ得意な分野があるので、自分が前にでるより、得意なことについては任せている」という。かつては、代表自らが陣頭指揮をとるスタイルだった同社は、確実に変化しているのだ。

星野氏は「最近は、若い人に力がついてきているのを感じる」と語る。そこには、かつてレースで他者に勝つことを求め続けた「日本一速い男」ではなく、老舗企業の経営者として後進の育成に努める現在の姿がある。「現役時代はレーシングマシンを操ることが楽しかったけれど、今は人が成長するのを見ることが楽しい」と語る星野氏。その目線の先には、自身が築き、成長させてきた企業の未来を見据えているように思える。

今も次の一手を考えるチャレンジ精神

コロナ禍により、同社にも多くの試練はあるだろう。だが、例えば、日本マクドナルドが2020年度、店内飲食が減少しつつも、テイクアウトやデリバリーなどの新しい試みにより、営業利益が過去最高の312億円となったことに着目。星野氏は、同社でも「何か取り入れられることはないか考えている」と、相変わらずチャレンジ精神は旺盛だ。

星野氏には現役時代、レース前には食事が喉を通らず、じんましんが必ず出ていたというエピソードがある。豪快なドライビングからは想像できない、じつは繊細な面を持った人物なのだ。その繊細さが絶頂期にもかかわらず引退後の不安をかきたて、当初はサイドビジネスだったホシノインパルを生み、今やライフワークとなった。終身雇用制度がほぼ終焉し、企業に勤めるなど本業だけでは生き残れないといわれる現在のビジネスマンの中には、同氏のストーリーに勇気づけられる人もいるのではないだろうか。現状を守りながら未来へチャレンジする、人生のサバイバル戦を生き残るためのヒントが、星野氏の生きざまに隠されているような気がする。

原点でもある「D-01シルエット」のデザインを復刻し、NV350キャラバン用に現在も販売している「インパル・シルエット」。オリジナルの4穴を6穴に変更し、デザインも十文字から星形に変更されている(筆者撮影)
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