「日経平均は緩やかに上昇」との予測を変えない訳 投資家が気になっている4つの質問に答えよう

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もちろん、そうした人を責めているわけではない。ただ余計なお世話かもしれないが、専門家がどういうデータや情報を収集し、それをどう分析して、結論を唱えているのか、という核心部分を軽視すると、せっかくの見解に触れても、本質をとらえられず活用できないのではないか、と心配している。

なお筆者は、株価が下がると考えているときには「下がるだろう」と言い、上がると予想すれば「上がる可能性が高い」などと唱えているにすぎない。別に弱気派でも強気派でもないのだ。専門家にそうした「○○派」というレッテルを貼っても、そこで思考停止に陥るだけで、何も得られるものはない。

アメリカのインフレ懸念と株価との関係は?

2つめはアメリカのインフレ懸念と株価の関係だ。「一時は、アメリカの長期金利の上昇で、成長株がどんどん売られた。足元ではインフレ懸念の声も聞く。その割には、このところのアメリカの株価の動きは、物価データの強弱や長期金利の上下動と並行的でないようにも思う」といったものだ。

筆者は、中長期の時間軸でいえば、経済や企業収益、政治・政策動向などが、株価の大きな方向性や適正水準を定めると考えている。一方で、短中期での市況動向は、適正水準から上下に乖離しやすい。

なぜこのように市況が上下に振れるかといえば、先行きは実際に何が起こるかは、誰にも確実にはわからず「おそらく今後の経済は大きく改善するだろう」「企業収益は減益に転じるかもしれない」といった明暗さまざまな見通しを持って、投資家が売買するためだ。

投資家が、先が読めないというリスクをとって売り買いすることによって、市場においては手探りで株価の適正水準が定まっていくと考えられる。

つまり、株式投資は名作ゲームであるドラゴンクエスト風にいえば「市場というダンジョン(地下牢や迷宮の意)の中で、適正価値を見つけ出すというクエスト(冒険の意)」だといえる。

よって、いきなりラスボスに遭遇して、ゲームオーバーになることもありえよう。ただ、リスクをとって先行きを考え、適正価値を見い出すというクエストに成功すれば「適正価値より株価が安いときに買う」、あるいは「適正価値より株価が高いときに売る」ということによって、投資収益という報酬を手にすることができる。

とすれば、中短期的な株価動向は、そのときどきの諸材料を正確に反映して動いているわけではなく、冒険者たちが「今度はこんな魔物が出た」「次は貴重なアイテムを手に入れた」と心理的に振れることで、上下動している面が大きいのだろう。

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