「日経平均は緩やかに上昇」との予測を変えない訳 投資家が気になっている4つの質問に答えよう
オリンピックで景気がよくなるとされる要因は主に2つある。1つは、開催前に、スタジアムなど競技施設の新設や改築、あるいは公共交通機関や宿泊施設などへの投資が行われる、という点だ。もう1つは、開催期間に海外から観光客が訪れることだ。
ただ、過去の夏季オリンピック開催国における実質経済成長率の推移を見ると、とくにロサンゼルス、アトランタ、ロンドンなどにおいては、すでに諸設備が十分にあったため、投資が景気を押し上げたという効果は見出しにくい。
東京も、そもそも(新型コロナウイルス感染症流行前の時点においても)ほぼ同様であったろう。加えて、新国立競技場や選手村などの建設はすでに完工しており、今からオリンピックが開催されても中止されても、関係はない。
また海外からの観光客については、今回の東京オリンピックでは一般の訪日客は受け入れない方針で、入国は選手団などに限られている。来日客数も、オリンピックが開催されても中止されても違いはほとんどない。
筆者はすべての海外投資家と話をしているわけではないが、筆者が情報交換をしている範囲内では、オリンピック開催の有無で日本株の売買を判断する、という向きはいない。海外投資家がオリンピックを契機として大きく売りか買いを膨らませる、との説を唱える専門家がいるようだが、おそらく筆者が接触していない海外投資家の話を聞いているのだろう。
アメリカの雇用情勢と株価の関係にも楽観的
最後の4つめの質問はアメリカの雇用統計に関するものだ。「アメリカの雇用は強いのか弱いのかよくわからない。加えて、雇用統計の数字がどうなると株価がどちらに動くかも、よくわからない」
4月分の雇用統計発表時(5月7日)には、非農業部門雇用者数が前月比26.6万人の増加(当初発表値、その後27.8万人増に小幅修正)と小さめで、話題となった。
最新の5月分(6月4日発表)では55.9万人の増加で、市場の事前予想の65.0万人や、3日に発表された民間のADP雇用統計における97.8万人増を下回り、想定より弱かった点が注目された。
4月分の雇用者増が小幅だった理由は、景気が悪いためではなかった。むしろ、企業は業務増に対応しようと求人を増やしていたとされる。ところが、政府が景気対策として家計へのさまざまな所得補填を進めており、このため失業者が「当面はお金があるから、急いで仕事に復帰しなくてもよいのではないか」と判断し、求職者が増えなかったからだとの説が有力だ。
しかし、いつまでも働かなくてよいわけではないだろう。再就職へのためらいには、新型コロナウイルスへの感染を懸念している面もあろうが、ワクチン接種の広がりが今後、心理面でそうした心配を和らげる面もある。
5月分の雇用者数の増加が事前の予想を下回ったとはいえ、4月よりも大きくなった理由は、徐々に失業者が労働市場に復帰するという「正常化」の動きが進みつつあるからだと解釈している。
労働供給が増加することで、平均時給前月比は4月の0.7%増から5月は0.5%増へと、若干ながら鈍化している。つまり、再就職により個人所得が増え、消費が支えられるとの期待が広がるとともに、賃金インフレの加速懸念は薄らいでいくと見込まれる。
足元のアメリカの雇用情勢については、株価という面で楽観的にとらえてよいだろう。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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