地政学リスクに敏感、日経平均154円安に 背景には世界景気の減速懸念も

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 7月18日、マーケットは急速に高まった地政学リスクに敏感な反応をみせている。写真は都内の為替トレーディングルームで墜落したマレーシア機に関するニュース番組を観る男性(2014年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 18日 ロイター] - マーケットは急速に高まった地政学リスクに敏感な反応をみせている。マレーシア機墜落やイスラエル軍のガザ地区での地上作戦を受け、株式などリスク資産から金や国債など「安全資産」に資金を移す動きが強まった。

ただ、地政学リスク自体はそれほど高まらないとの見方も多い。リスクオフ方向の値動きが激しくなった背景にはグローバル景気に減速懸念が強まっていることがあるという。

低ボラ環境変わるきっかけか注目

市場関係者を驚かせたのは、その値動きの大きさだった。米ダウ<.DJI>は161ドル安と約2カ月ぶりの下げ幅。S&P500<.SPX>も23ポイント安と4月10日以来の大幅な下げとなった。日経平均<.N225>も一時、250円を超える下げとなった。マネーは金など「安全資産」にいったん逃避。金先物<2GCQ4>は1300ドルの大台を回復した。

別名「恐怖指数」と呼ばれ、投資家の不安心理の度合いを示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティ・インデックス(VIX指数)は32.2%の急上昇をみせ、4月15日以来の高水準となった。1カ月物のドル/円ボラティリティ(予想変動率)

市場では「現在の低ボラティリティ環境が変わるきっかけになるのではないかとの懸念が強まった」(準大手証券トレーダー)という。

ただ、地政学リスクは単なるトリガーにすぎないようだ。

マレーシア航空の旅客機が17日、ウクライナ東部で墜落。ウクライナは親ロシア派武装勢力がロシアの支援を受けて撃墜したと非難、米国も撃墜が濃厚と指摘し、ウクライナをめぐって東西陣営が対立するリスクが高まった。しかし、情報は交錯。不透明感を嫌った初期反応の売り以上に警戒感が強まったわけではない。

昨日までウクライナのキエフを訪問していた第一生命経済研究所エコノミストの田中理氏は「東部の緊張は続いているが、キエフはほぼ普通の生活に戻っている。国内事情を抱えるロシアは撤退することはないだろうが、しっぺ返しも怖いので攻勢を強めることもないだろう。現時点では急激に地政学リスクが高まることはないのではないか」と述べている。

ドイツの経済指標が悪化

地政学リスクが高まることが確実視されたわけではないにもかかわらず、市場がこれほどまでに強い反応をみせたのは、背景にグローバル景気の減速懸念があるからだと、三菱東京UFJ銀行・金融市場部戦略トレーディンググループ次長の今井健一氏は指摘する。

欧州では、ドイツの7月ZEW景気期待指数が7カ月連続で低下、2012年12月以来の低水準となった。5月の鉱工業生産も2年ぶりの大幅減少。ドイツ経済はユーロ圏でも比較的好調と見られていたが、ここにきて減速感が強まっている。フランスやイタリアの5月の生産もマイナス。景況感の弱さが最近のユーロ安の背景だ。

中国も政策発動効果で、4─6月期国内総生産(GDP)は政府目標の7.5%を維持したが、GDPの15%を占める不動産市場に「火種」を依然抱える。

国営の新華社が17日に報じたところによると、李克強首相は、雇用と賃金が改善している限り、今年の経済成長率が7.5%から多少上下に振れても容認できると述べたことは、下振れの布石との見方もある。

日本も消費増税後の経済指標はまちまちで自律的回復軌道に乗ったとはまだ言い切れない。米国経済は堅調だが、米国だけで世界の景気を支えるのは難しい。「世界的な低金利傾向は、世界的な潜在成長率の低下懸念に加え、景気循環的にピークを越えたかもしれないという見方が広がっていることも要因だ」(今井氏)という。

18日の米債市場では、10年債利回りは、2.53%から2.44%に低下。ロイターのデータによると、1日の低下幅としては2月初旬以来およそ5カ月半ぶりの大きさとなった。日本でも超長期ゾーン利回りに強い低下圧力がかかり、20年債利回りは一時1.350%と2013年4月10日以来の水準に低下している。

一方、アライアンス・バーンスタインのマーケット・ストラテジスト、村上尚己氏は「株価は企業業績の拡大をともなっており過熱しているとみていないが、債券は過熱感がさらに強まらないか警戒が必要だ。今回のウクライナでの旅客機墜落は情報が錯そうしているが、地政学リスクは高まらないとの見方が多い。反動の金利上昇には気を付けるべきだろう」と述べている。

(伊賀大記 編集:内田慎一)

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