証券化商品の信頼回復に情報開示の進展が最重要--アンドリュー・キンボール ムーディーズ エグゼクティブ・バイスプレジデント
--原資産のデータを発行体が開示しなかったり、データの履歴が不十分だったりして、相関関係や変化を見誤ったという問題もあります。
発行体との機密保持契約の下でわれわれに示されているデータは開示できない。ただ、履歴が浅いという問題については、何年の蓄積データがあるのか、それが将来起こりうる変化を十分反映するものなのか、われわれは見解を述べている。また、投資家は、その固有の商品のデータだけでなく、同じセクター全体のデータも見て判断することが重要だ。
--ストラクチャード・ファイナンスに固有の符号を付ける規制には、反対だったのでは。
われわれとして反対したわけではない。2年前の投資家向けアンケートで、「格付け符号が煩雑になるのは望まない」という回答が多かった。だが、EUはこの規制の導入を決めた。個人的にはよいことだと思っている。
事業活動を裏付けとする証券化商品だけが生き残る
--シンセティックCDO(ローンの現物を裏付けとせず、ローンを参照するCDSで組成した証券化商品)の案件で、SEC(米証券取引委員会)がゴールドマン・サックスを詐欺で民事提訴しました。この影響をどう見ていますか。
市場で生き残れる商品は限られる。実際の事業活動に裏打ちされた商品だけが残るのではないか。たとえば、RMBS(住宅ローン証券化商品)、ABS(資産担保証券)、CLO(企業ローン担保証券)だ。シンセティックCDOも一部は残るかもしれないが、大半は難しいだろう。
ただ、証券化市場は規制強化された中で回復していくと思う。銀行のバランスシートにローンを載せておくだけでなく、リスクをパッケージ化し、幅広い投資家に引き受けてもらうことには今後も意味がある。