スズキが直面「インドとミャンマー」という難関 積年の課題「インド一本足」から脱却できるか

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インド経済に詳しい日本総合研究所の熊谷章太郎副主任研究員も「政府が景気刺激策を実施しても、そのために必要な国債の増発により、長期金利が上昇して景気浮揚効果を打ち消してしまう展開も想定される」と話す。かえって景気の悪化が長引くことになってしまううえ、2019年にインド減速の原因となった金融不安も残る。

悩ましいのは、スズキの「外患」がインドだけでないことだ。2月に国軍がクーデターを起こし、現在も市民の弾圧を続けるミャンマーも大きなリスクを抱えている。

ミャンマー工場は稼働停止に

スズキがミャンマーで自動車生産を始めたのは1999年のこと。現在は4輪車工場が2カ所あり、スイフトやキャリイなど4車種を年間約1.3万台、生産している。2019年の市場シェアは約60%とトップシェアを誇っており、2020年には120億円を投じ、年間4万台の生産能力を持つ新工場の建設をヤンゴン市南東にあるティラワ工業団地で進めていた。

ティラワ新工場の稼働予定は2021年9月だったが、鈴木社長は「(ミャンマーは)先行きが読める状況ではない、ミャンマーの情勢をしっかりみながら、どの時期に生産を開始するのがいいか判断する。常識的に考えると9月の稼働は難しい」と話す。ミャンマーの現状を考えると稼働延期の可能性が高く、既存工場も2月から稼働停止が続いている。

5月の決算説明会で鈴木社長は「(インド以外の新市場といっても)他の市場はリスクが低いかというと、ミャンマーの例があったりする。新しい市場に行くというのは簡単に見えて非常にリスクが高い。僕はインド以上に(新市場は)リスクが高いと思っている」と語り、インドに収益を依存した現状からの脱却には否定的な考えだ。

6月の株主総会で鈴木社長の実父である鈴木修会長が引退し、スズキの舵取りは鈴木社長の肩に全面的にのしかかる。スズキの新経営体制は発足して早々、難題が突きつけられることになった。

中野 大樹 東洋経済 記者

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なかの たいじゅ / Taiju Nakano

大阪府出身。早稲田大学法学部卒。副専攻として同大学でジャーナリズムを修了。学生時代リユース業界専門新聞の「リサイクル通信」・地域メディアの「高田馬場新聞」で、リユース業界や地域の居酒屋を取材。無人島研究会に所属していた。趣味は飲み歩きと読書、アウトドア、離島。コンビニ業界を担当。

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