山水電気、「オーディオ御三家」の墓標 資金繰りが続かなくなり、破産手続きを開始
それでも今まで存続してきたのは、やはり”ブランド”に尽きる。山水電気を傘下に収めた香港資本とはセミテックだが、このセミテックは同じく日本のオーディオブランドである赤井電機のブランドを取得。その後、アカイホールディングスという社名になった。全盛期の山水電気は90%以上を輸出していた事から海外でのブランド力が強く、、新興国でのオーディオ事業開拓のために伝統のある信頼のブランドとして駆り出されたわけだ。
オーディオ市場は健在
2012年に会社更生法が適用され上場廃止となった時も、今回、破産処理を開始した時も、オーディオ関係者からは、「えっ、まだ山水電気は存在していたのか」との声が聞こえてくる。日本人にとってのSANSUIはすでに失われ、新規市場開拓のために使う撒き餌にされていたのだ。モノづくり企業、あるいはオーディオメーカーとしての企業価値は、ほぼゼロになっていたのである。
しかし、この事例をオーディオ業界全体のトレンドとして見ると、世の中の動向を見誤る。オーディオ機器へのニーズは、音楽文化が廃れない限り続くものだ。問題はどのようなオーディエンスに対し、どのような価値を提供するのか。フォーカスを定め、変化するニーズに対応した付加価値を追求することで、事業開発を行う余地がある。
たとえば米オッポ・デジタル(中国のスマートフォンメーカー、オッポの兄弟会社)は、500ドル以上の値付けの高級ブルーレイプレーヤーを年間20万台以上販売し、最近は30万台の売り上げを見据えた投資を行っている。オッポはその名を知られるようになってから、まだ5年あまり。この短期間に、高級ブルーレイプレーヤでは欠かせない圧倒的な支持を得られるようになったのだ。
短期間で成長できた理由は、彼らがエンドユーザーのニーズに敏感に対応し、欲しいと思える仕様の製品を、実際に購入しやすい価格で提供したから。ゼロから活動を始めたオッポが、短期間に優れたオーディオ機器、ビジュアル機器メーカーとして認識されたのは、時代の変わり目において適切な商品企画を、確かな技術の元で実現させたからにほかならない。
すでに過去の話ではあるのだが、プリメインアンプで掴んだ成功を次の時代へ繋げられなかった山水電気の悲劇は、今にも繋がる教訓を秘めているのである。
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