「いろんなことを気軽に話せる人が家にいてくれるのは本当にありがたいです」
幸せに水を差すわけではないが、1点だけ気になることがある。正彦さんは有名とは言えない私立大学の卒業生だ。学歴主義の父親は結婚を祝福してくれたのだろうか。
「確かに、彼は究極の普通の人です。仕事もいわゆる協力会社のシステムエンジニアで、各現場に派遣されて働いています。年収は私と同じぐらいなので、2人合わせてようやく1000万円程度。でも、性格は穏やかで家事もできます。欠点は、大事なことを言うときにわかりにくいことぐらい(笑)。結婚前に父親に紹介するときは『本当に普通の人だからね』と事前に何度も刷り込んでおきました。40歳過ぎの娘をもらってくれるのだから、と父親も喜んでいたみたいです」
もちろん、百合さん自身が正彦さんとの共同生活に納得感と心地良さを覚えていることが前提だ。その幸福感は百合さんのことを誰よりも心配してきた父親にも伝わったのだろう。
苦い経験もひととおりしたからこそーー
親の期待を感じながらも反発し、職場恋愛にもスペック重視の婚活にも失敗。昔の恋人の面影を長く引きずり、不倫の末に裁判沙汰にもなってしまった――。百合さんはまるで「晩婚さんすごろく」を1人で体現しているような人物である。
しかし、苦い思いも含めていろいろ経験したからこそ、「究極の普通の人」である正彦さんの価値に気づき、現在の平凡な日常に感謝ができているのだ。早婚さんにとっての結婚はスタートにすぎないかもしれないが、晩婚さんにはすごろくの「あがり」とも言える。
坂を上った先には豊かな平野が待っている。百合さんの今後の生活は平穏であり続けるに違いない。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら