「恋愛すごろく」を一通り体験した女性の最終結末 暗黒時代を経て43歳で結婚した女性の"選択"

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「いろんなことを気軽に話せる人が家にいてくれるのは本当にありがたいです」

幸せに水を差すわけではないが、1点だけ気になることがある。正彦さんは有名とは言えない私立大学の卒業生だ。学歴主義の父親は結婚を祝福してくれたのだろうか。

「確かに、彼は究極の普通の人です。仕事もいわゆる協力会社のシステムエンジニアで、各現場に派遣されて働いています。年収は私と同じぐらいなので、2人合わせてようやく1000万円程度。でも、性格は穏やかで家事もできます。欠点は、大事なことを言うときにわかりにくいことぐらい(笑)。結婚前に父親に紹介するときは『本当に普通の人だからね』と事前に何度も刷り込んでおきました。40歳過ぎの娘をもらってくれるのだから、と父親も喜んでいたみたいです」

もちろん、百合さん自身が正彦さんとの共同生活に納得感と心地良さを覚えていることが前提だ。その幸福感は百合さんのことを誰よりも心配してきた父親にも伝わったのだろう。

苦い経験もひととおりしたからこそーー

親の期待を感じながらも反発し、職場恋愛にもスペック重視の婚活にも失敗。昔の恋人の面影を長く引きずり、不倫の末に裁判沙汰にもなってしまった――。百合さんはまるで「晩婚さんすごろく」を1人で体現しているような人物である。

しかし、苦い思いも含めていろいろ経験したからこそ、「究極の普通の人」である正彦さんの価値に気づき、現在の平凡な日常に感謝ができているのだ。早婚さんにとっての結婚はスタートにすぎないかもしれないが、晩婚さんにはすごろくの「あがり」とも言える。

坂を上った先には豊かな平野が待っている。百合さんの今後の生活は平穏であり続けるに違いない。

本連載に登場してくださる、ご夫婦のうちどちらかが35歳以上で結婚した「晩婚さん」を募集しております。事実婚や同性婚の方も歓迎いたします。お申込みはこちらのフォームよりお願いします。
大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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