世界企業が次々と「大坂なおみ」を起用する理由 ナイキやLVMH、リーバイスは何に惹かれたのか
「私は絵がほんとに下手だけれど、彼女は上手く描いてくれます」と、大坂はまりについてこう話す。「彼女はよくわかってくれます。時々、私が何を考えているかわかるように伝える必要がないほどです」。
パンデミックが起こる前、大坂は帯にヒントを得たビスチェや、水晶の縁取りのデニムショーツなど、作品のコンセプトを説明するために、ウエスト・ハリウッドにあるリーバイスの作業所を訪ねた。対面での打ち合わせができない時は、ズームを利用し、生産前に10件のデザインを承認した。
「子どもの頃、アメリカズ・ネクスト・トップモデルやプロジェクト・ランウェイを見ていましたが、あれは舞台裏で起こっていたことのうわべにちょっと触れたようなものでした」と、大坂は言う。リーバイスではその過程を見ることができ、「ボタンや生地の裁断などに、とても専門的に取り組んでいます」。
企業に利用される立場ではいたくない
昔のセレブのスポンサースタイルとは違い、大坂は仕事を通じて学ぶところがなければ、企業とは協力したいと考えていない。
多くの企業が、白人以外の人種が過小評価されていた何十年間をあわてて埋め合わせしようとしている中で、大坂は自分が黄金のチケットように見えるのかもしれない、と気づいている。
「私はたんに表看板、あるいは利用される誰かにはなりたくありません」と彼女は語る。「ブランドと協力するなら、たんにお金のためにメッセージを広げようとするのではなく、心の底からそうしたいです」。
スイートグリーンのテストキッチンでは、大坂はさまざまな野菜の長所や短所、どの材料が上手く合うかを尋ねたり、スイートグリーンの共同創設者、ルー氏がトングを使った正しい混ぜ方を実演するのを見ながら学んでいた。
上の階の間に合わせの会議室で、彼女はコンクリートの壁に貼られたムードボードを写真に撮った。仕上がっていない天井やガタガタする網の窓をじっと見て、「素敵な建築ね」と心からの感想を述べた。多くのセレブは部屋を見回すよりも、スマホをチェックするのに夢中になる。大坂、あるいは彼女のブランドはそうではない。
「多くのことにとても好奇心をそそられます」と、彼女は話す。「好奇心を抱くのは、人生の中で幸福なことの1つです。なぜなら、もし好奇心がなくなれば、落ち着いてしまったような感じになります。私はテニスプレーヤーですが、ここでサラダを作るといった新しい経験、機会を持てることにとても恐縮しています。そんなことを言える人は多くないと思います」。
「私はテニスがかなり得意ですが、ほかのことも上達したいです」と、彼女は言い添えた。
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