現代人が今、ケインズ「一般理論」を知るべき理由 池上彰×山形浩生「教養としての経済学」対談

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――異常な株高で、実体経済と乖離していると言われますが、これについてもケインズが指摘していることに当てはまりますか?

山形浩生(やまがた ひろお)/評論家、翻訳家。東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻修士課程およびMIT不動産センター修士課程修了。開発援助関連調査のかたわら、小説、経済、建築、ネット文化など広範な分野での翻訳および雑文書きに手を染める(撮影:尾形文繁)

山形:たくさんお金を刷ってしまったので、お金の行き場がなくなって、株高に走ってしまったという面は確実にあります。

これをケインズ的と言うべきなのかどうか。金利は下がってゼロになったけれど、そこからどうするかということは『一般理論』では答えは書かれていません。

将来的にはインフレ期待で対応しよう、というのがこれまでのやり方です。ケインズは、美人投票や期待の話などで、みんながどうなると思うかで結果が変わってくるということは書いていますから、指摘していると言えばしていますけれどね。

ケインズ理論はビジネスパーソンの教養の1つ

池上:流動性の罠についても、ケインズは触れていますね。

みんなが期待することで結果が変わるという話から、やがて、ケインズを批判することによって、合理的期待形成理論が登場してもいます。

実は、ケインズ理論があるからこそ、いろんな理論も出てきたんだと言えるとも思うんですよね。そういう意味で、経済学者としては偉大な人物だと思います。

やはり、現代に生きる人間として、ケインズ理論は、これぐらいは知っておくべき教養のひとつ、と言えると思います。ましてや、ビジネスパーソンや、将来的に政治家を目指すのであれば特に。

例えば、アベノミクスは、第1の矢「大胆な金融政策」と第2の矢「機動的な財政政策」をやって急場をしのぎ、第3の矢「民間投資を喚起する成長戦略」で景気を良くするというものでしたが、2番目で止まってしまった。

ケインズを知れば、なぜ投資が必要なのかが理解できますから、第3の矢の意味がわかってきます。経済ニュースを深く理解するためにも、基本的な知識はあったほうがいいですね。

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