芭蕉のように旅したい、宮城県ご当地鉄道事情 日本初の地下鉄道や交流電化を誇る鉄道王国

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宮城県と山形県を結んで奥羽山脈を越える路線は仙山線ともう1つ、陸羽東線がある。区間は小牛田―新庄間。仙山線とは違って非電化、のどかな車窓が続く牧歌的なローカル線だ。くだんの松尾芭蕉、『奥の細道』の旅では平泉を訪れた後に岩出山から鳴子を経て現在の山形県に入っている。つまり、陸羽東線のルートに沿って歩いたというわけだ。

鳴子温泉を通る陸羽東線。2020年まで観光列車「リゾートみのり」も運転されていた(筆者撮影)

陸羽東線の中で最大の見所は、こけしでおなじみ鳴子温泉だろう。温泉郷の玄関口となっている鉄道駅は日本中にあるが、鳴子温泉郷は鳴子温泉駅のすぐ目の前に広がっていて、アクセスが実に便利だ。温泉宿をとってもいいが、仙台市内に宿泊して日帰りで訪れるのも充分可能。それでいて、源義経と郷御前の子どもが産湯を使った奥州三名湯を楽しめる。鳴子温泉のお土産ならば、もちろん“こけし”である。

松尾芭蕉も鳴子温泉郷を歩き、少し西にある尿前の関という関所を越えて陸奥から出羽を目指した。『奥の細道』には、「此路旅人稀なる所なれば、関守にあやしめられて、漸として関をこす」とある。そんな道のりを、鉄道ならばあっという間なのだからありがたい時代になったものである。

南北に貫く東北本線

最後に、こうした路線をすべて脇役のごとく連ねて宮城県内を南北に貫く東北本線にも触れておかねばなるまい。

往年の大動脈・東北本線も今では東北地方各地で地域輸送に従事する(筆者撮影)

東北本線はご存じ東北地方の背骨たる大動脈であって、古くは「はつかり」「はくつる」「北斗星」、幾多の名列車が上野から北国を目指して駆け抜けた。新幹線時代になって、そうした列車は今ではすべて姿を消して、東北本線を通して走る列車はなくなった。

仙台はいわばその象徴で、常磐線直通列車の一部を除いて福島方面・一ノ関方面ともに仙台駅が始発駅。つまり、仙台は東北にやってきて最初に降り立つ駅であり、そこから南に戻るかそれともさらに北を目指すのか、その分かれ目の駅だということだ。果たして次にどこに行くのか、仙台に腰を据えてじっくり考えようと思う。

鼠入 昌史 ライター

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そいり まさし / Masashi Soiri

週刊誌・月刊誌などを中心に野球、歴史、鉄道などのジャンルで活躍中。共著に『特急・急行 トレインマーク図鑑』(双葉社)。

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