芭蕉のように旅したい、宮城県ご当地鉄道事情 日本初の地下鉄道や交流電化を誇る鉄道王国

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いま、その役割を果たしているのはJR仙石線だ。1925年に宮城電気鉄道という私鉄によって開業したのがルーツ。開通当初に仙台市内の地下を通っていた区間は日本で初の“地下鉄道”。ルートは変わったが、今でも仙石線は仙台駅の地下を通っている。仙台市街地はそのまま地下で抜け、宮城野原駅はプロ野球・楽天の楽天生命パーク宮城の最寄り駅だ。

そして多賀城市や塩竃市を経て松島へ。日本三景の1つに数えられる松島海岸の景勝地へ向かうなら、仙石線が便利なのである。今では仙石線のおかげで電車に乗っているだけで松島に着くが、松尾芭蕉の時代にはそうはいかず、芭蕉は塩竈から船に乗って松島を訪れたという。

松島からブルーインパルスでおなじみ航空自衛隊松島基地のある東松島市などを通って海岸線をゆき、石巻を目指す。宮城県第一の都市と第二の都市を結ぶ路線だけあって、仙石線は東北地方の中でも比較的お客の多い通勤通学路線である。そして同時に松島観光にも使える路線であって、乗ったことがある人も多いのではないか。

ただ、仙石線は仙台駅のところで地下を通っていて、ほかの路線との乗り換え、たとえば新幹線から仙石線に乗り換えようと思うとそうとうに歩かねばならぬ。いちど、仙石線の仙台駅から新幹線に乗ろうと歩いたことがあるが、思った以上に時間がかかって指定席を買っていた新幹線に乗り遅れそうになったほどだ。それではいささか不便である。

交流、直流、非電化を走る

そこで2015年に登場したのが、仙石東北ラインである。

仙石東北ラインの列車はハイブリッド気動車のHB-E210系(筆者撮影)

仙石線は宮城電気鉄道という私鉄がルーツという事情もあって、東北地方のJR線では唯一の直流電化路線である。対して、仙台駅を通る東北本線は交流電化。この違いを乗り越えるべく、仙石線と東北本線がほとんど隣り合うほどに接近している松島付近に連絡線を設け、新たにハイブリッド気動車のHB-E210系を開発。そうして東日本大震災での被災から仙石線が全線復旧したのに合わせ、東北本線から仙石線に直通する運転系統として仙石東北ラインが開業したのだ。

仙石東北ラインのおかげで、仙台と石巻はずいぶん近くなった。仙石線の各駅停車では79分もかかる仙台―石巻間が、仙石東北ラインだと1時間もかからない。さらに、“ハイブリッド気動車”を使っているという利点を生かして一部の列車が石巻線に乗り入れて女川駅にまで通じている。女川と言えば東北電力女川原発がよく知られるが、それ以前に女川湾やその沖合は日本でも屈指の好漁場。宮城県にやってきて東北の魚介を味わおうと思うなら、女川を目指すのがいちばんである。

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