アメリカ外交官130人が「謎の脳損傷」調査の中身 中国、ロシア、キューバなどで被害の報告

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同長官は問題調査と医療対応を監督する役に、デービッド・コーエン副長官を任命。コーエン副長官は毎月犠牲者に会い、議会で定期的に報告を行うことになっている。当局はまた、負傷した政府職員の治療と管理を行う医療関係者の数を倍増した。

さらに、最高医務責任者が引退を表明したが、同責任者は過去の事象に対して過度に懐疑的で、いくつかの症状については無関心であるという批判を一部の元政府職員から受けていた。後任にはCIA内で患者介護を重視すると見られている医師が就任した。

トランプ政権から調査を強化

このミステリーは2016年、ハバナに駐在していた外交官とCIA職員の具合が悪くなって初めて注目されたが、この時は職員がめまい、吐き気、頭痛を訴えたことが報じられた。同様の事例は翌年中国の広州でも発生し始めた。また、すでに2017年にはロシアを含むさまざまな国を訪問していたCIA職員の一団が、同様の攻撃の犠牲になり、似たような症状を報告していたと、ニューヨーク・タイムズは昨年10月に報道している。

議員やトランプ政権の国家安全保障会議は昨年、国務省とCIAによる一連の事象への対応について一段と不満を募らせた。

トランプ前大統領の最後の国家安全保障問題担当大統領補佐官ロバート・オブライエンと同副補佐官マシュー・ポティンガーは、謎の事象について理解し、国防総省により深く関与させようとする側近らの動きを後押しするため、2020年の初めにはすでに取り組みを始めていた。

しかしながら、トランプ前大統領のスタッフは、被害者に関する詳細をCIAや国務省、その他機関に共有させようとしたものの、思い通りに進めることができなかった。理由の1つは、政府による健康データの保護で、ホワイトハウスの当局者らはCIAが主導してきた調査は行き詰まったと考えていた。

こうした中、バイデン政権は、一連の事象の原因特定と被害者向け医療改善の両方に取り組むため各機関にコーディネーターを指名するよう指示するなど、一層の調整を試みている。これらの事象について説明を受けた一部の民主党員も、バイデン政権に対して本件の調査をより積極化することを求めている。

(執筆:Julian E. Barnes記者、Edward Wong記者、Eric Schmitt記者)

(C)2021 The New York Times News Services

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