日本株の短期下落懸念がなかなか消えない理由 最も重要な米国の景気はどうなっているのか

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「表面上」弱い数値であった、と書いたのは、後述のように実際の雇用情勢は堅調だと考えるからである。

それはさておき、7日の株価動向についてマスコミによる場況をみると、景気敏感株が買われたことに関しては、「実際には雇用情勢が堅調で、アメリカの経済全体も回復軌道にある、という見解から、買いが入った」と書かれたものを目にした。一方で、成長株の株価上昇に関しての解説では「雇用統計が弱く景気が強くないと判断されたため、金利上昇懸念が薄らぎ、成長株が買われた」との理由付けが多い。こうした相反する見解が、同じ記事に両方同時に盛り込まれているものまであった。

こうした矛盾した内容の記事が流れていることについては「マスコミのせいだ」とも言い難い。つまり、マスコミは市場関係者などに取材してその内容を記事にしているため、市場において景気が強いという見解と弱いという見解が混在しており、しかもそのどちらもが「株は買いだ」と唱えているような事態だと言える。これらからは「投資家心理の過熱」が感じられ、かえって先行きの株価の行方が警戒される。

投資家の信用買いも過熱状態だ。「マージンコール」(証拠金債務残高、信用取引のために投資家が借り入れた金額の残高)を見ると、直近の3月末のデータで、前年比71.6%もの急増を示している。

これは近年では、2007年のパリバショックや2008年のリーマンショックの前の強気相場における数値(2007年7月末62.6%増)を上回り、ITバブル期の2000年3月の80.5%増に次ぐものだ。このマージンコールの前年比とS&P500株価指数の前年比の関係は深く、今後信用による株式買いが利食いで反動減になると、株価指数もいったん下振れするものと懸念される。

アメリカの景気は過熱?

アメリカの景気動向をみても、過熱圏に入っているように見受けられる。
そう語ると「景気は強ければ強いほどいいことではないか、景気が強いことの何が悪いのだ」という反論がありそうだ。確かに景気が穏やかに強く、好景気が持続するならよいことだ。だが、大抵の場合、強すぎる景気は「山高ければ谷深し」の言葉通り、厳しい反動不況に陥ることが多い。

また景気が強いとインフレ率が大きく高まる傾向がある。インフレは言葉上の定義は物価が上昇することを意味するが、落ち着いたインフレ、たとえば物価上昇率が2%程度でそれがそのまま継続するのであれば、企業の売上高も利益も名目ベース(物価上昇を含んだベース)で膨らんでいくため、それに基づいた名目ベースの株価も上昇が期待される。

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