日本株の短期下落懸念がなかなか消えない理由 最も重要な米国の景気はどうなっているのか
しかし過去の世界各国の経済動向をみると、物価上昇率が急速に高まると、上昇率自体が不安定化し、先行きの物価がどうなるのかが不透明になりやすい。すると企業も自社の製品やサービスをどう値付けしてよいのか、原材料や設備機械をいつ買い入れたらいいのか、などの経営計画が立てにくくなり、企業行動が混乱する。
またインフレが高進する局面では、すべての価格が同じ率ずつ同時に上がるわけではなく、原材料や製品、賃金などの上昇がばらばらになりがちだ。原材料価格の上昇が先行して大きく、製品価格の引き上げが遅れれば、企業収益が圧迫される。もしくは賃金上昇よりも製品やサービスの価格が大きくなる局面では、家計の消費が抑制される。
したがって、景気は拡大した方がよいが「まあまあぼちぼち」が好ましい、ということになる。
ISM製造業景況指数の「60超え」はどう考える?
これに対して、足元の経済動向を、たとえば企業の景況感を測るアメリカのサプライマネジメント協会が発表しているISM指数のうち製造業景況指数でみると、近年は60前後が天井で、その水準を大きくは突き抜けることができず、指数が反落する傾向がある。
ところが足元では、2~4月分が3カ月連続で60を超えており、景気の過熱感が示されている。前述のように、4月の雇用統計については、数値自体は弱く見える。これはコロナ禍で職を失った人たちのなかで、アメリカ政府が家計向けの補助金を支給したため、職探しを急がない向きが多く、企業が求人しても応じる人が十分ではないためだ、との分析が聞かれる。
まだコロナ禍が完全には収束していないため、さらにワクチン接種が広がってコロナの流行が沈静化することを待って働き出そう、という人もいるだろう。したがって、こうした分析ではアメリカの雇用情勢、ひいては景気全般は強いと判断しているわけだ。
こうして景気が過熱気味になると、その後景気減速ないし後退に陥りかねないわけだが、そのように経済が先行き悪化する経路は、次のようにいくつか考えられる。
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