根拠なき緊急事態宣言はもはや人災でしかない 事業者を圧迫、非正規雇用と婚姻は大幅な減少

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これまでのコロナ対策は、感染者数の増加に翻弄されて、効果とコストのバランスを欠いていたと思われる。

コロナウイルスの真の姿は、すでに昨年6月ごろにはある程度明らかになっていた。すなわち、日本人にとってのコロナウイルスは、米欧諸国に比べても、他の死亡リスクと比べても、それほど脅威ではないという事実である。理由は不明ながら、日本人には「ファクターX」が与えられていたのである。

そのファクターXを十分に活かさず、活動制限に偏重したコロナ対策によって経済的・社会的な二次被害を拡大させてしまったというのが過去1年間の振り返りである。昨年5月までは「未知のウイルス」による天災だったが、昨年6月以降は政府の過剰対応による人災と言うこともできよう。

遅きに失した感はあるものの、早急にコロナ対策を見直すべきである。感染症専門家の意見を聞くだけでなく、より広い視点で政治決断することが必要だ。死亡率が高い欧米型の「活動制限で感染を抑制する」というスタンスを脱し、日本独自の対策に軌道修正することが求められる。感染者数だけに右往左往するのではなく、感染を抑制しつつコロナとの共存を目指すという姿である。

具体的には、重症化率の高いハイリスク者に対する感染防止・治療に医療資源を集中的に投入する。そして、ハイリスク者以外には、基本的に自由に生活させるべきだ。活動制限が必要と判断される場合は、エビデンスを提示して、本当に必要なエリアで最小限にとどめるべきである。

「指定感染症」見直しを。「願望に基づく政策」は最悪

こうした政策に切り替えるに当たっては、まず指定感染症の見直しが不可欠である。コロナ受け入れ病院や保健所を逼迫させているのも、指定感染症として厳格な対応をとることが求められているからだ。コロナをエボラ出血熱・ペスト並みに扱う現在の分類を改め、インフルエンザ並みの5類相当に変更すれば、医療機関もより柔軟に対応できるようになる。

これまでのコロナ対策は「願望に基づく政策」であった。「この感染拡大さえ収束させれば」「飲食店さえ営業短縮すれば」「地域限定で活動制限さえすれば」等々。こうした説明に国民は辟易しているのではないだろうか。根拠に基づく政策、大局観に立った政策、国民生活に寄り添った政策に変えていくべきである。

枩村 秀樹 日本総合研究所 調査部長・チーフエコノミスト

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まつむら ひでき / Hideki Matsumura

日本総合研究所 調査部長・チーフエコノミスト。1992年東京大学経済学部卒業、住友銀行入行。1995年日本経済研究センターに出向。韓国・タイ経済、日本経済、少子高齢化・産業構造変化などを担当。2014年内閣府 経済財政諮問会議 民間議員室に出向。2016年日本総合研究所マクロ経済研究センター所長、2019年7月から現職。

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