根拠なき緊急事態宣言はもはや人災でしかない 事業者を圧迫、非正規雇用と婚姻は大幅な減少

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第1に、マクロ経済でみると、昨年1年間でGDPは22兆円減少した(約4%)。ただし、リーマンショック時のように全業種で平均して落ち込んだのではなく、好不調の差が著しく拡大したことが特徴である。具体的には、製造業はすでにコロナ前の生産水準を回復する一方、サービス業では大きく落ち込んだ状態が続いている。個人消費の形態別寄与度をみても、家具・家電製品などが含まれる耐久財はプラスに転じる一方、サービス消費はマイナス幅がそれほど縮まっていない。

サービス産業の苦境は本当に深刻である。日銀短観の業況判断DIをみても、宿泊・飲食サービスと対個人サービスが飛び抜けて落ち込んでいる。売上高がゼロの状態に陥っても、固定費だけは確実に流出するため、赤字は累積的に増加していく。個人事業主や小規模事業者が多いサービス業では、コロナ禍に対応した業態転換もそう簡単には実現しない。これまでは「活動制限はいつか終息する」という希望を抱いて事業を継続してきたが、活動制限が繰り返し発令される現実を目の当たりにすれば、倒産や自主廃業を選択する事業者も増えてくるだろう。

サービス産業の落ち込みが招く非正規の大量失業

第2に、サービス産業の苦境は、労働市場における格差を拡大させている。消費減少を主因に雇用者数は前年割れを続けているが、その内訳をみると、非正規雇用が大きく減少していることがわかる。

とりわけ、女性の非正規労働者が直近値で前年比75万人も減少している。さらに詳しく見ると、若年世代の女性の非正規労働者が大きく落ち込んでいる。今年1~2月時点でも、15~44歳の女性非正規労働者は前年を1割前後も下回った。こうした動きは、男性を中心に雇用環境が悪化したリーマンショック時とは対照的である。

当然、女性の非正規労働者にしわ寄せが行った理由は、サービス産業での業績悪化である。もともと宿泊・飲食サービスでは、雇用者に占める女性非正規の割合が5割を超えていた。生活関連サービスや娯楽業でも、女性非正規の割合は4割を超えている。そのため、活動制限による売り上げ減少に直面した企業は、真っ先に女性の非正規労働者を解雇したのであろう。

こうして失職した女性の非正規労働者に対して、政策支援は十分に行われているだろうか。支援制度の認知不足や手続きの複雑さから、救済の手が差し伸べられていない女性は多い。昨年1年間で、男性の自殺者が減少する一方、女性の自殺者が急増したのも、生活苦に対する支援不足が原因だった可能性がある。

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