第3に、子どもの成長阻害も、まだ統計として現れていないマイナスの影響である。
学校では依然としてさまざまな制約を受けながら授業を行っている。大学では、オンライン授業が主体という学校も多い。新しい教育スタイルという前向きな評価もありうるが、総合的に考えれば、やはり学力に対して負の影響を与えることになるだろう。
また、子どもと社会との接点が少なくなったことで、自制心、協調性、粘り強さ、忍耐力といった「非認知能力」の形成にも支障を来している。非認知能力は、学力以上に将来の成功を左右する要因であることが、米国などでの調査で明らかになっている。
若年期の一回限りの成長機会を阻害されることは、個々人の人間形成の面で大きな問題になるだけでなく、マクロ的にみても、人的資源のクオリティ低下を通じて潜在成長率を引き下げることになる。子どもの健全な成長を願うなら、子ども庁創設の前に今すぐやるべきことがあると思う。
結婚件数の減少は出生数を14万人押し下げる
第4に、少子化を加速させることである。実はこれが、日本社会における最も大きなマイナス影響かもしれない。
非嫡出子が相対的に少ない日本では、出生率の変動要因は、有配偶率、すなわち結婚率と有配偶者出生率(完結出生児数)の2要因に分解できる。このうち、少子化の原因としてより大きかったのは、有配偶率の低下であった。実際、完結出生児数はほぼ2人前後を維持してきたのに対し、20~30代女性の有配偶率は趨勢的に急低下してきた。日本の少子化対策を語る際には有配偶率が非常に大きな意味を持つ。
ところが、昨年の結婚件数は前年に比べ7万件以上減少したため、有配偶率の低下が加速した公算が大きい。この背景には、コロナ対策で醸成された自粛ムードによって、出会いの場がなくなったり、結婚を先送りする動きが広がったためと考えられる。
2011年の東日本大震災のときにも結婚件数は大きく減少し、翌年には盛り返す動きがみられたものの、2011年の落ち込みを完全に取り戻すには至らなかった。今回も、先送りされた結婚が今後顕在化する可能性はあるものの、出会いの機会が大幅に減少していることを勘案すれば、昨年の落ち込み分を取り戻すのは難しいだろう。ちなみに、2015年の完結出生児数(1.94人)をもとに試算すれば、昨年の結婚件数の減少は、今後の出生数を14万人押し下げることになる。
以上のように、現在のコロナ対策は、現下の経済的な損失が大きいだけでなく、中長期にわたる社会活力も急速に奪いつつある。
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