活動制限の意義が不確かな一方で、それに伴うコストは深刻なレベルに達している。まず、対象地域を絞った活動制限にもかかわらず、想定を大きく上回るマイナス影響を生み出していることを指摘したい。
「緊急事態宣言」でほかの地域でも活動縮小
普通に考えれば、活動制限が導入された地域の人出は減少し、導入されていない地域の人出は変わらないはずである。活動制限地域からの流入で人出はむしろ増えることも考えられる。しかし、実際に日本で起きているのは、活動制限の対象地域とまったく同じパターンで、全国の人出水準が低下するという現象である。
1月8日の緊急事態宣言の際には、対象となった1都3県の人出は発令前後の1週間で18.0%減少した。そして、対象とならなかったその他43道府県の人出も、同期間に16.4%減少したのである。4月5日のまん延防止等重点措置の際にも、対象となった1府2県の人出が6.5%減少するなか、対象外の44都道府県の人出も5.6%減少した。
このような「同調意識」はどのようにして生まれるのだろうか。日本人の国民性もあると思われるが、政府やマスコミの報道姿勢も一因と思われる。一地域の活動制限を大きなニュースとして取り上げ、「恐怖のコロナ」という修飾語を付加したうえで全国の家庭に配信し、国民に萎縮ムードを植え付けているからだ。結果、特定地域で活動制限が発令されるだけで、全国レベルで一斉に活動を抑制してしまうのである。
こうした自粛行動によって、どれくらいのコスト(犠牲)が発生しているのだろうか。4つの切り口から分析してみたい。
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