アメリカのEV(電気自動車)大手のテスラが、中国籍の元社員の曹光植氏が技術情報を盗んだとしてカリフォルニア州の裁判所に提訴していた事件で、テスラと曹氏が和解したことがわかった(訳注:訴訟の経緯は『中国・新興EV、テスラの技術窃盗疑惑で猛反発』を参照)。
同州北部地区連邦地方裁判所が開示した文書によれば、双方は4月16日、曹氏がテスラを退職後も同社の自動運転システムのソースコード(プログラムの設計図)を所持し続けたことを謝罪するとともに、テスラへの賠償に応じることに合意した。賠償の具体的な内容は明らかではない。
曹氏は2017年にテスラに入社し、コンピューター視覚科学の研究者としてニューラルネットワークの開発チームに所属。2019年1月にテスラを退職した後、中国の新興EVメーカーの小鵬汽車が自動運転システムの画像センシング技術の開発責任者としてスカウトした。
テスラによれば、その後の調査により、曹氏が2018年3月から12月にかけてソースコードを繰り返し複製し、合計30万件を超えるデータを個人のクラウド・ストレージにアップロードしていたことが判明した。2019年3月、テスラは企業秘密の窃盗を理由に曹氏を提訴した。
自動運転技術の開発の方向性に相違
裁判所にテスラが提出した資料によれば、曹氏は小鵬汽車からスカウトのオファーを受けた後もソースコードの複製をやめず、さらに小鵬汽車に転職後も複数の情報端末からソースコード・ファイルにアクセスしたという。テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)は自身のツイッターで、「小鵬汽車はテスラの自動運転技術を盗んだ」と繰り返し発言していた。
これに対して曹氏は2019年7月、(ソースコードの複製など)テスラの指摘の大部分を認める一方で、企業秘密を小鵬汽車に提供したり、小鵬汽車での技術開発に転用したりしたことはないと強く主張した。小鵬汽車もまた、問題の企業秘密の入手について強く否定していた。
今となっては、テスラと小鵬汽車の自動運転技術は開発の方向性に相違が生じている。テスラの技術は視覚情報のコンピューター処理を中核に据え、車両にはカメラとミリ波レーダーだけを搭載。レーザー光を用いた3次元センサーの「LiDAR(ライダー)」は搭載していない。
一方、自動運転技術の開発企業の大多数は、LiDARを高度な自動運転を実現するために不可欠なハードウェアと位置付けている。小鵬汽車が4月14日に発表した新型EVセダン「P5」は、5台のミリ波レーダー、12台の超音波センサー、13台のカメラに加えて、2台のLiDARを搭載している。
(財新記者:劉雨錕)
※原文の配信は4月17日
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