健康被害ないけど気になる「スマホのカビ」生態 画面ではなくカバーと本体の隙間に発生する

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2014年の春、私はスマホカバーのカビについての調査を行った。すると1台のスマホカバーで、最高56万個のカビの胞子が検出された。このカビ数は栄養が少ない環境にしては多く、同じ面積のフローリングのカビ数(最高4.7万個)の約10倍、浴室の壁(最高450万個)の約10分の1であった。

ここに生えるカビは怖いものだろうか。カバーの内側のカビは外部に漏れることはほとんどないので、健康に影響があるとは考えられない、というのが、私の見解である。

環境中のカビによる主な健康被害は、胞子を大量にかつ継続的に吸い込んだ場合のアレルギー疾患だ。一時的に大量に胞子を吸い込むことは日常生活ではあるし、どれくらい吸えば健康被害が起きるかは、医学的に数値で表現することは難しいようだ。

正しい知識を持っていない医学博士は多い

スマホカバーのカビについて論文を発表したところ、あるテレビ番組でインタビューを受けた。私は「健康被害はないだろう」といつものように答えた。ところが、その番組のヘッドラインでは、健康被害がある、となっていた。私のコメントとは正反対である。

どういうことなのか? 驚きながら番組を見ていたら、私のインタビューは採用されず、ある医学博士が「スマホカバーのカビは健康被害の恐れがある」とコメントしていた。そして私の出番はなかった。「害はない」と言うより、「被害の恐れがある」としたほうが視聴率を稼げるからかもしれない。一方で、カビの健康被害について正しい知識を持っていない医学博士は多いと、私は思っている。

対策としては、カビは乾燥を嫌うので、カバーを外して洗って干すことを心がけよう。夜の間はせめて手から離して干しておきたい。

スマホのカビの研究は、新聞で紹介されたこともあり、テレビの取材依頼が何件かあったが、撮影では毎回苦労した。どこのテレビ局もカビの特集は梅雨時に放映したがる。

しかし、そのころには、スマホのカビは減少する傾向にある。先ほど述べたように、スマホのカバーのカビの季節は冬であり、梅雨ではすでに暑くなり過ぎているのだ。そのことをテレビ局に一所懸命に説明してもなかなかわかってもらえない。

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