健康被害ないけど気になる「スマホのカビ」生態 画面ではなくカバーと本体の隙間に発生する

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また、ディレクターはなぜか、街頭に立って道行く人に、「スマホを見せてもらえませんか?」というロケの映像を撮りたがる。所有者からOKをもらうと、私が外したスマホカバーをルーペで覗く役をする。これまでにそういったロケに3回も付き合った。

とはいえ、立派にカビの生えたスマホはなかなか見つからない。梅雨時や夏の最中に、街頭で長袖の白衣を着て、汗だくになってカビを探すのは、身も心も消耗する。いい歳をしてと、情けなくなる。

実はこのスマホカバーのカビ調査は、私の研究生活において最も楽な調査の1つだった。

大学の講義が終わった後、学生に、「これからスマホのカビを調べたい。協力してもよいと思っている人は、私のところに持って来てください」とお願いする。協力してくれる学生に並んでもらい、調査用のふき取りキットを使って、カバーの裏側のカビを次々に採取していく。ベルトコンベアーのように、貴重なサンプルが向こうから来てくれるのだ。15分ばかりの間に、50余りのサンプルが集まったこともある。

多くの学生が素直にボランティアに協力してくれたのには、もちろん秘訣(ひけつ)がある。協力してくれれば、試験の採点にボランティア加算をすることを少々匂わせたのである。

カビを培養して気づいた異変

そんなある日、カビが生えているスマホカバーが持ち込まれたので、さっそくカビの部分を培地に移植して培養を始めた。3日ほど経ってからカビの成長を観察した。

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そのとき、ある異変に気付いた。生えているカビのコロニーの上で何か小さいものが動いている。それも1匹だけでなく、あちこちのコロニーに群がっていた。ルーペで覗き込むと、いずれもカビを餌にするケナガコナダニだった。

カバーの内側にダニが侵入するのだろうか? 私は不思議に思った。そこで、スマホの持ち主に、使用状況について聞いてみることにした。持ち主は1歳の赤ちゃんの母親だった。彼女が言うには、娘がいつもスマホで遊んでいる。そして、食べ物カスのついた手で触ったり、スマホをしゃぶったりしているという。

湿った栄養分が供給されれば、カビ汚染だけでなくダニ汚染も起きることを知ったのである。

浜田 信夫 大阪市立自然史博物館外来研究員

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はまだ のぶお / Nobuo Hamada

1952年、愛知県生まれ。農学博士。京都大学薬学部卒業、同大大学院農学研究科博士課程修了。大阪市立環境科学研究所へ。住環境のカビについて研究し、住宅、エアコン、洗濯機などのカビの生態を解明。2012年より現職。長年にわたり、食品などに生えるカビについて市民からの相談も受けている。著書に『カビはすごい! ヒトの味方か天敵か!?』(朝日文庫)など。

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