湘南に「エッジの立った介護施設」集まるなぜ

クリエイティブな介護事業者生む土壌とは

世界的にも注目が高い介護施設を運営するあおいけあの加藤社長(写真:筆者撮影)

神奈川県藤沢市を中心に湘南エリアには医療・介護分野で最先端を行く事業者が集中している。たとえば鎌倉市には、在宅医療のフロントランナーであるドクターゴン鎌倉診療所があり、地域の複数医療機関と連携して在宅医療に取り組んでいる。藤沢市にある農作業とアートを軸とした障がい者デイサービス・NPO法人さんわーくかぐやには、福祉関係者だけでなく、農業関係者など多くの人が視察に訪れる。

世話をするのはなく、自立を支援

その中でも、世界からも高評価を得ているのが、介護施設を展開するあおいけあである。2001年に設立した同社は、「グループホーム結」「デイサービスいどばた」を中心に、介護保険法の精神にのっとり、要介護状態の軽減、または悪化の防止を旨とした、多くの事業者とはまったく異なる運営をしてきた。要は何から何まで世話をするのではなく、介護を受ける人の状態に合わせて自立支援を行う、というスタンスだ。

「要介護状態の軽減や、悪化の防止を考えるなら、10時のお茶は出してあげるのではなく、自分たちで出すようにしないと意味がありません」と、同社を率いる加藤忠相社長。「その考えのもと、認知症患者でもできる人には包丁、丸ノコを使ってもらっていますが、多くの事業者は介護保険法以前の、お世話してあげるという考えから抜け出せておらず、何もやらせない」。

加藤氏が不動産やIT関係など異業種の人たちと組んで始めた「ノビシロハウス」の新棟。1階にはカフェなどが入る(写真:筆者撮影)

そんな介護業界における革命児への注目は高く、2016年に NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」に登場、2019年にアジア・太平洋地域の高齢者ケア分野で影響力のある事業所として「Aging Asia Global Ageing Influencer」にも選ばれている。

もっとも、加藤氏に言わせると、湘南エリアに医療や介護の先端業者が集まるのには、その「土台」があったからだ。そして現在、活躍しているのはその背中を見て育った子どもたち世代だというのである。

例えば、1992年に専業主婦5人が始めたぐるーぷ藤は、訪問・通所介護などの介護保険事業、高齢者住宅、サービス付き高齢者向け住宅、認知症カフェなどを運営しており、2016年時点で100人を超えるスタッフを抱えている。また、1993年に藤沢の特別養護老人ホームから始まった社会福祉法人いきいき福祉会ラポールグループの事業所数は25を超すほどに。さらに、1997年に子育て休業中だった看護師が仲間を募って始めた、介護の手伝いをする訪問ボランティアナースのキャンナスも現在、全国138カ所で運営するほか、東日本大震災以降は災害ボランティアナースとしての活躍も多く、メディアでもしばしば取り上げられてもいる。

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