湘南に「エッジの立った介護施設」集まるなぜ クリエイティブな介護事業者生む土壌とは
実際、表の通り、とくに2011年以降、湘南地区では次々と個性的な事業者が多数誕生(書ききれないほど)しており、湘南エリアではさまざまな分野のバリアが少しずつ下げられてきている。
きずなの会は主催者が忙しくなったことに加え、コロナ禍もあって2019年を最後にリアルでは開かれていないが、それぞれの活動は続いている。加藤氏も2021年には福祉+住宅という新たなジャンルに挑戦している。
それが「ノビシロハウス」と呼ばれる、住居、コミュニティスペース、地域医療拠点を備えた多世代型アパートで、これまで遠い存在だった福祉と不動産が協業する。具体的には、学生の減少で空室だらけになったアパートと、隣接する駐車場に建設された新棟からなる施設。アパートには高齢者、学生、福祉関係者が住み、新棟には地域の人の居場所であり、高齢者の仕事場ともなるカフェ、ランドリーや医療、介護関係のオフィスが入居する。
年代を超えて助け合える住まいというわけで、若者は半額で入居でき、その分を高齢者が相場より少し高めの賃料を払うことで支援するという。建物竣工時には新棟入居者はすべて決まっており、住宅も竣工から1カ月で募集をした2階3戸のうち、ノビシロオフィス以外の2戸が決まった。高齢者も受け入れる1階は工事の遅れから4月8日以降に募集を始める予定だ。
地域に新たな人を呼び込む場所に
これまでもあおいけあを利用したい、働きたいと全国から人が集まってきてはいたものの、地域密着型の施設を利用するためには空きがあるかどうかに加え、3カ月以上藤沢市に住む必要があり、働くためにも住宅が必要だった。ノビシロハウスがそうした人たちに住む場を提供できれば、学生減少で空室が増えた地域に新たな人を呼び込むことができる。
加藤氏は、これが地域の価値向上にもつながるのではないかと見る。周辺に増えた空きアパートを順次借り受けて、高齢者以外にも住宅を借りるのに困難があるシングルマザーや障がい者などに向けた住宅を増やせないか考えているという。
福祉関係にかぎらず、毎日の仕事に追われて業界内に閉じこもってしまい、新しい試みに思いが至らない事業者を見ることが多いが、湘南では人とつながることで新しい発想が生まれ、先進的な福祉の取り組みが続いている。大学や公共施設が街の魅力となって人を集めることがあるように、福祉施設が街に人を呼ぶ魅力のひとつになるとしたら面白いと思う。
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