アース製薬「殺虫剤をやめてもいい」宣言の真意 除菌剤にも注力、「感染症総合ケア会社」目指す
生き残りをかけて、アース製薬は東南アジアへの展開を加速させている。タイではすでにシェア3位となっており、2020年に127億円あった海外売上高を2023年までに160億円へ伸ばす。四季がある日本に対して、東南アジアは年間を通じて温暖であるため、安定した売り上げを見込めるという。
ハエや蚊、ゴキブリ以外の新領域の開拓も進める。現在、足がかりとして期待しているのが「ダニがホイホイ」などのダニ用商品だ。ダニはアレルギーを引き起こすことなどが知られ、市場が急速に拡大している。
市場規模は2020年で62億円と小さいが、2019年の44億円からわずか1年間で1.5倍弱に伸びた。アース製薬もこの間に1.3倍近く売り上げを伸ばしている。
「脱虫ケア」で感染症商品にシフト
ダニ用商品は日用品大手のP&Gが2019年に衣料用洗剤の「アリエールダニよけプラス」を販売。室内芳香剤などに強いエステーも2020年にダニ用商品市場に参入するなど激戦区だが、今後が期待できる。
アース製薬がさらに踏み込もうとしているのは「脱」虫ケアだ。川端社長が見据える将来像は、「感染症トータルケアカンパニー」。同社はこれまで、デング熱や日本脳炎といった虫を媒介とした感染症の関連商品を提供してきた。それを除菌など感染症の予防にまで事業を拡大させていく。
目下注力しているのが、除菌剤の一種である「MA-T」(Matching Transformation System)だ。成分のほとんどは水だが、反応すべき菌やウイルスが存在するときのみ除菌成分を生成する。アルコールを含まず、安全性が高いため、飛行機内などで広く使われている。新型コロナウイルスを98%以上消毒することができる。
現在、アース製薬はMA-Tを業務用向けに展開している。2019年には子会社のアース環境サービスでMA-Tを使用した業務用製品を販売。その後、OEM製造も始めた。今後は一般消費者向け製品の販売を見据えている。
除菌剤市場でMA-Tの知名度はまだ低い。川端社長も「MA-Tはチャレンジ」と認めたうえで、「経営がしんどくなるとできなくなるから、順調なうちに次の成長の種をまいておく」と話す。
MA-Tの認知拡大を図り、除菌剤市場での生存競争を勝ち抜けば、感染症トータルケアカンパニーという理想像に近づいているだろう。
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