「野球が9回制になった」あまりに予想外の理由 かつては「21点先取した方が勝つ」ルールだった

拡大
縮小

そこで、カートライトさんは試合を回数(イニング)で区切ることを思いつきました。結果、現在も続く9回までに得点数の多いチームが勝ちというルールに落ち着いたのですが、そこに至るまでには、2つの説が存在します。

「9回制」になった2つの説

1つが、12回制を試してみたというもの。12を2周したら1日が終わる時計と同じように行うというということですね。時計の元になっている12進法は当時のアメリカでは一般的な計算方式でもありましたから。しかし、これが意外と時間がかかることに気づき、3回分を削って9回にしたという説です。

もう1つが、キリスト教の教えにある“三位一体”(父なる神、キリスト、精霊の3つは本質的に1つのものであるという考え)を元にした、完全な数字である「3」を3度繰り返す9回にしたという説。

これも当時の上流階級に属するインテリなアメリカ人特有の考えに基づくものですが、いずれにしても、9回と定めたことでシェフたちも納得。

1846年6月19日に、この規則の下に、ニッカボッカー・クラブとニューヨーク・ナインというチームが初めての試合を行いました。結果、ニッカボッカー・クラブは1-23と大敗してしまったそうですが、現在でもアメリカではこの6月19日を「ベースボールの日(またはベースボール記念日)としています。奇しくも去年の日本プロ野球開幕日は、この日だったんですねぇ。

アレクサンダー・カートライトさんは1892年に72歳で亡くなりましたが、没後46年を経た1938年に“現代野球の父”として、アメリカの野球殿堂入りを果たしています。「野球=9回」が確立された陰にあったのがシェフの不満って、ちょっとホッコリしますよね。

小林 偉 メディア研究家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

こばやし つよし / Tsuyoshi Kobayashi

メディア研究家、放送作家、日本大学芸術学部講師。東京・両国生まれ。日本大学藝術学部放送学科卒業後、広告代理店、出版社を経て、放送作家に転身(日本脚本家連盟所属)。クイズ番組を振り出しに、スポーツ、紀行、トーク、音楽、ドキュメンタリーなど、様々なジャンルのテレビ/ラジオ/配信番組などの構成に携わる。また、ドラマ研究家としても活動し、2014年にはその熱が高じて初のドラマ原案・脚本構成も手掛ける。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT