コロナ「医療逼迫」に「国民が我慢せよ」は筋違い 森田洋之医師が語る「医療の不都合な真実」

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病床数が世界一の国でなぜ医療が逼迫するのか。なぜ都道府県単位で悩むのか(写真:時事通信)
現在、「医療逼迫」を理由に、新型コロナの感染拡大防止として、まん延防止等重点措置が宮城県、大阪府、兵庫県、東京都、京都府、沖縄県、埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県の10都道府県で実施されている。さらに、大阪、兵庫、東京は緊急事態宣言が発出される見通した。北海道夕張市立診療所長としての体験などから日本の医療制度や実態を調査し、『日本の医療の不都合な真実』の著書もある森田洋之医師に話を聞いた。森田医師は「医療逼迫」「医療崩壊」の原因は日本の医療制度にあり、まん延防止等重点措置や緊急事態宣言によって国民の活動を制限するのは筋違いであると指摘する。

日本の医療では「市場の失敗」が起きている

森田洋之(もりた・ひろゆき)/1971年横浜生まれ。医師、南日本ヘルスリサーチラボ代表、ひらやまのクリニック院長。鹿児島医療介護塾まちづくり部長、日本内科学会認定内科医、プライマリーケア指導医、元鹿児島県参与(地方創生担当)。一橋大学経済学部、宮崎医科大学医学部卒。財政破綻後の北海道夕張市で市立診療所長として地域医療の再建に尽くす。専門は在宅医療、地域医療、医療政策など。近著に『日本の医療の不都合な真実』(幻冬舎新書)、『うらやましい孤独死』(フォレスト出版)(撮影:今井康一)

――今年に入って、「医療逼迫」を理由に緊急事態宣言を発出し、それを2度にわたって延長、さらに飲食店を規制対象とする「まん延防止等重点措置」の導入と、国民の活動を制限する措置が継続的にとられています。問題は日本の医療制度のほうにあるとのことですね。詳しくお話しください。

まず、日本の感染者数は現在も、人口比で欧米のほとんどの国々よりも1桁少ない。一方で、1人当たりで見た病床数は世界で最も多く、医師の数も欧州主要国よりはやや少ないけれども、アメリカとは変わらない。

それでなぜ医療逼迫が起きるのか。日本の医療システムは、医療提供を国で管理するのではなく各病院の自由に任せているため、経済学で言う「市場の失敗」が起きているのです。患者数という需要側にもまして、医療の提供という供給側に問題があるのです。

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