また、シノバックもチリが自社のワクチンをラテンアメリカで普及させる「媒介」になってくれることを期待した。これはチリが実際にシノバック製ワクチンをラテンアメリカに配給する役割を果たすという意味ではなく、チリが近隣国に「宣伝」することを期待していた、という意味だ。
何しろチリは、世界の多く国との貿易取引が盛んで、ラテンアメリカでもどの国とも良好な関係を維持している。それはちょうど、アルゼンチンがロシア製ワクチン「スプートニクV」をラテンアメリカで普及させるのに貢献したようなものである。
その代償として、シノバックはチリに今後3年間毎年2000万回分のワクチンの提供を約束した。最終的にチリが購入を決める前にチリから2人の薬学専門家が5日間シノバックの生産設備などを視察している。
イスラエルと正反対の状態に
ところが、ワクチン接種が進む一方で、新規感染者はうなぎのぼり状態にある。足元では1日約8000人と、この2カ月で倍に増えている。同様に猛烈な勢いでワクチン接種を進めたイスラエル(現時点で人口の約半分か2回目の接種を終えている)の新規感染者数がピーク時に比べて96%も減っていることに比べると、明らかに違いがあるのはなぜだろうか。
欧米紙はこぞって「ワクチン接種が始まったことによる気の緩み」が、逆に感染拡大を引き起こした、と指摘している。チリは昨年11月にビジネス客を中心に国境閉鎖を解除した上(4月5日に再び閉鎖)、1月には国民に対して夏のバケーションを目的とした地域間の移動を許可するようになった。また、レストランやジム、ショッピングセンター、カジノも再開し、人々はビーチなどに殺到していたという。
アメリカのニューヨーク・タイムズ紙に対してチリ医療協会のフランシスカ・クリスピ医師は、「(海外から)入国する人の追跡を行わなかった上、チリ人の多くもバケーションで海外に行ってしまった。(ワクチン接種キャンペーンは)多くの人に間違った行為を促した」と語っている。
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