農業ビッグバンの経済学 山下一仁著
農政は「票」、それも票数の多い兼業農家肩入れの政策選択が続く。民主党も新たに「戸別所得補償」の導入に向け動き出した。農業保護はいわば世界各国どこでも行われている。アメリカやEUも直接支払いへと保護の構造を転換。しかし、日本の場合は価格支持政策中心を変えず、それに今回は将来展望なき「補助金」が上乗せされる。
日本の農業衰退は、政策の失敗の積み重ねによることが、あらためて本書で明らかにされる。そしてまた、中途半端な政策に動く。
著者は、焦点のコメの「減反(生産調整)という価格維持カルテルを段階的に廃止し、米価を需給均衡価格まで引き下げれば、兼業農家は耕作を中止する。一定規模以上の主業農家に耕作面積に応じた直接支払いを交付し、地代支払い能力を補強すれば、農地は主業農家に集まり、コストは大きく下がる」など、説得的かつ具体的な政策を提案。
本書を下敷きにした抜本的な改革が待たれる。
日本経済新聞出版社 1995円
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