企業のDX化には「本棚を眺める」事が不可欠な訳

まずは外部環境の棚卸しをすることが大切だ

第2は、本屋の本棚をみることによって、自社が真に集中すべきポイントが明らかになる。ない本が何かがわかるからだ。ネットフリックスの場合、それが視聴経験を最適化するためのマイクロサービス開発とデータ解析であった。

「選択と集中」と言えば、これまでは業種的な考え方を前提とした事業の取捨選択であった。しかし、デジタル全面化時代の選択と集中とは、おそらくここでいうように、デジタル化の本棚を見渡したうえで、すでにあるものは他社に頼り、そこにはない本を探して、その実現に資源を集中することになるはずだ。

第3に、こうしたプロセスをへて本棚にない本を見つけて開発をすると、それ自体が実は他社に売れるプロダクトになる、ということだ。ネットフリックスのサービスは何かと問われれば、コンテンツのストリーミングサービスだというのが誰しもの答えだろう。

しかし同時に、それを最適化するためのツールを開発してしまえば、それをプラットフォームとして他社に提供することも可能になる。つまり自分の書いたものを本として本屋におけばよいのである。それをするかしないかは、個々の企業の選択の問題だ。

新聞社は何を売る会社か

実はそのような実例がサルダーナの本で紹介されている。その実例の担い手はワシントンポスト。世界的に知られた新聞社である。同紙記者のボブ・ウッドワードとカール・バーンスタインがウォーターゲート事件を調査し、ニクソン大統領を辞任に追い込んだことでも有名だ。

そうした過去の栄光はあったものの、近年は他の多くの新聞社と同様に売り上げの減少に悩まされ、経営危機に陥った。そして2013年にアマゾンの創業者のジェフ・ベゾスが2.5億ドルで買収することになる。

その後ベゾスの経営のもとでワシントンポストは何をしたか。それがDXへの邁進と、テクノロジーに大胆に投資することである。具体的には、潜在的な購読者がSNSを通じてワシントンポストの提供する多様なサンプルコンテンツを経験購読し、次第に高付加価値のサービスの購読へと誘われるように仕組み化した。

その過程で生まれたのが、ワシントンポストという媒体を電子的に購読する経験を最適化するためのデジタルツールの開発である。ネットフリックスの取り組みの新聞版だと考えて良いだろう。新聞と言っても紙媒体ではなく電子配信だから、文字と画像、動画のコンビネーションとして配信される。

また、コンテンツは新聞、雑誌、ウェブサイト、アプリといったさまざまなチャネルで提供される。その全体の利用経験を最適化するためのソフトウェア開発にチャレンジしたのである。

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