企業のDX化には「本棚を眺める」事が不可欠な訳 まずは外部環境の棚卸しをすることが大切だ

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そして生まれたのが「アーク・パブリッシング」と呼ばれる編集ツールなのだが、それをプラットフォームとして、他の新聞社などにも提供している。

また、この編集ツールは、ネットフリックスと同様にマイクロサービスの組み合わせで提供されているために、内容の更新と展開が常時可能で、導入する各新聞社などのニーズに合わせてカスタマイズすることもできる。ワシントンポストはそのプラットフォームの提供から1億ドルの収入を得ることを目指しているらしい。

ここで起きていることは何か。それは、ワシントンポストのビジネスは、昔風に言えば、新聞の編集・発行・配達だということになる。同社はベゾスが買収した後ジャーナリストの採用も増やしたので、メディアとしての役割を放棄したわけではない。

しかし、新聞社というビジネスをDXすると、その結果達成されるのは、新聞が電子化するということ(だけ)ではなく、DXを実現するツールが出来上がることでもある。

そしてそれがプラットフォームになって、場合によると本来のビジネス以上に競争力のあるサービスになるかもしれない、ということだ。経営者が「本屋の本棚の前に立ってそこにない本を探す」ことが必要なのはそのためでもある。

本棚のストーリーを図にしてみる

以上説明した本棚のストーリーを図にしてみよう。実はそれに参考になる図を書いた人がいる。サイモン・ウォードリーという人で、彼の書いたウォードリー・マップというのがその図である。英国政府も参考にしたことがあるらしい。

彼はもともと何をしようとしてこのマップを開発したのか。それは個社のシステム構成をマップにするということである。システム構成は通常ボックスとラインで表示される。ネットワークの表現と同じだ。しかしそこには方向がない。

つまりシステム構成図では、右に書いたボックスを左に移し、あるいは上下を逆転させても実質的な意味が変わらない。北海道と九州とを入れ替えると意味が変わる日本地図とは違う。彼は自分の経営していた会社の失敗の経験などを通じて、デジタル化に関して経営判断をサポートできるような、方向感のある文字通りの「地図」を描きたいと思ったらしい。本書と発想が似ている。しかし似ているのはそれだけではない。

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