中国のシャドーバンキング(影の銀行)の趨勢は、2020年第4四半期(10~12月期)に転機を迎えた。国際的な格付け機関であるムーディーズ・インベスターズ・サービス(ムーディーズ)が4月21日に発表したレポートによると、中国経済の緩やかな回復を受け、金融当局がリスク管理に重点を移した結果、2020年末の中国のシャドーバンキングの残高規模はそれまでの拡大傾向から反転。2021年にはさらに縮小するものと見込まれている。
ムーディーズが定義するシャドーバンキングには、広義と狭義の2種類がある。狭義のものには、委託貸付、信託貸付、銀行引受手形があり、広義のものには理財商品や銀行のオフバランス商品、証券会社やファンド会社の商品、ノンバンクローン、個人間融資などがある(訳注:委託貸付は、銀行や信託会社が仲介機能を提供する企業間貸付を指す)。
ムーディーズと金融当局の残高は一致せず
前出のレポートによれば、2020年の広義のシャドーバンキングの残高は59兆2000億元(約995兆円)と、前年比2000億元(約3兆3620億円)の増加にとどまった。さらに四半期別に見ると、1~9月の3四半期では合計7000億元(約11兆8000億円)増加したのに対し、10~12月期には5000億元(約8兆4000億円)の減少に転じた。これは金融当局がシャドーバンキングのリスク抑制に再び舵を切ったことを示している。
また、2020年末と2019年末の項目別の残高をみると、委託貸付が3000億元(約5兆円)、信託貸付では1兆1000億元(約18兆5000億円)減少している。ムーディーズは残高減少の主な理由を、不動産業界向けの信託貸付および迂回融資が金融当局の監督対象となったためとしている。
ただし、ムーディーズと金融当局がそれぞれ見積もっているシャドーバンキングの残高は必ずしも一致していない。2020年12月初旬、中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)は、初めてシャドーバンキングの定義、範囲、分類を発表し、広義と狭義のシャドーバンキングを明確に区別した。
銀保監会の試算では、2019年末の中国におけるシャドーバンキングの残高は84兆8000億元(約1425兆円)であり、ムーディーズが推計した59兆元(約992兆円)を大幅に上回っている。
ムーディーズは、前出のレポートにおいて、これら2つの試算における統計上の定義は同じではないとし「銀保監会は狭義の定義に高リスクの資産を含めている。一方、広義の定義においては(銀保監会は)資産管理業務における広範なサービスも対象としているが、ムーディーズの試算においては含めていないものもある」と説明している。
(財新記者:武暁蒙)
※原文の配信は4月6日
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