漁民を「国益守る人間の盾」にする中国の危うさ

日本人が誤解している「海上民兵」の正体

約220隻の大型の外洋漁船が数珠つなぎになって停泊しているスプラトリー諸島の周辺海域(写真提供:Philippine Coast Guard/National Task Force-West Philippine Sea/AP/アフロ)
フィリピンに近い南シナ海に、3月から多数の中国漁船が停泊し、波紋が広がっている。この海洋における国際社会への中国の挑戦に対して、中国防衛駐在官(駐在武官)も務めた、自衛隊きっての中国ウォッチャーが、人道主義や文民保護の視点から切り込む。

中国政府は「海上民兵ではない」と否定

2021年3月の南シナ海、フィリピンが排他的経済水域(EEZ)と主張するスプラトリー諸島の周辺海域に、約220隻の中国の漁船が集結している状況が国際社会に明らかにされた。

大型の外洋漁船が数珠つなぎになって停泊している状況を見て、筆者は三国志演義に出てくる「連環の計」の再現と感じると同時に、1990年の湾岸危機の際のある出来事を思い出さずにはいられなかった。

当時、軍事施設や政府施設への多国籍軍による攻撃を恐れたイラクのフセイン大統領は、外国人をそれらの施設に「人間の盾」として監禁した。串刺しのように連なる漁船はまるで中国の国益を死守するための「人間の盾」そのものに見える。

数珠つなぎの中国漁船について、フィリピン政府をはじめ国際社会では、海上民兵が乗り込んでいるのではないかとの憶測報道が広がっている。

これに対して、今のところ中国政府は「海上民兵ではない」と明確に否定している。中国政府が民兵ではないと否定する以上、その実態がどうであれ、国際法のうえでは、それら漁船や乗組員はただの漁船と漁民として扱う以外にすべがない。

そもそも中国の民兵(ミンビン)は、日本人の多くが民兵(みんぺい)という言葉から連想する、中東やアフリカで活動している反政府勢力や私兵の集団とはまったく異なる概念である。

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