東洋エンジ、「脱化石燃料」で経営再建の成否 アンモニアと再生可能航空燃料で狙う再浮上

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増資決定後も信越化学の子会社から受注したエチレンプロジェクトは尾を引いた。

顧客への引き渡しにこぎ着けたのは2020年3月中旬になってから。引き渡し遅延に伴う想定外のコストが発生。増資資金を使ってDX(デジタルトランスフォーメーション)投資などを実施し、EPC案件の効率化と費用低減を進める計画だったが、「ここ3年間(の計画)は道半ば」(永松社長)の状況に陥っている。

現場管理にタブレットを活用することで効率化を図っている(写真:東洋エンジニアリング)

また、EPC以外の事業を強化する方向性をより強調した。これまでのようにEPCでの稼ぎを当てにした経営では業績が不安定になることは避けられない。EPC事業は、製油所やプラント設備への投資が旺盛な時期は好業績だが、受注が悪化すると業績が大きく落ち込むからだ。

原油価格上昇で受注も回復へ

そのため、プラント各社の業績は原油市況に大きく左右され、業績が不安定になることが多かった。東洋エンジは燃料アンモニアの販売や電力事業を展開することで安定的な成長を図る考えだ。

東洋エンジの足元の業績は、コロナ禍もあって受注不振が続いているものの、2021年3月期は売上高1850億円(前期比15%減)、営業利益15億円(同20%減)、純利益が10億円(同40%減)を見込んでいる。2020年に低迷した原油価格も1バレル当たり60ドル前後まで回復しており、それに伴い石油化学プラントなどへの設備投資も改善するものとみられる。東洋エンジの受注高も回復への兆しが見えつつある。

アメリカの化学プラント案件に代表されるように、売上高拡大を優先させたことで個々のプロジェクト管理を徹底できなかったという反省があり、あくまでも利益を重視する経営にこだわる考えだ。

新中計では売上高3000億円、純利益の平均として50億円以上と高い目標を掲げた。インテグラルは増資の際、1株740円で優先株を引き受けたが、新中計公表後の株価は冴えない。4月以降の株価は700円台で推移しており、インテグラルが期待する姿にはほど遠いと言うべきだろう。

東洋エンジが「脱炭素」を成長エンジンにした企業として評価されるのは、もう少し時間がかかりそうだ。

大塚 隆史 東洋経済 記者

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おおつか たかふみ / Takafumi Otsuka

広島出身。エネルギー系業界紙で九州の食と酒を堪能後、2018年1月に東洋経済新報社入社。石油企業や商社、外食業界などを担当。現在は会社四季報オンライン編集部に所属。エネルギー、「ビジネスと人権」の取材は継続して行っている。好きなお酒は田中六五、鍋島。

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