超一流の人がドラッカーの愛読を欠かさない訳 視座の低い人に知ってほしい「3つの顔」

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ドラッカーは、事業の目的とは顧客創造であり、企業の機能はマーケティングとイノベーションであると定義しました。そして、事業と利益について次のように書いています。

「事業は利益の観点からは定義も説明もできないということである。事業体とは何かを問われると、たいていの企業人は利益を得るための組織と答える。たいていの経済学者も同じように答える。この答えは間違いなだけではない。的外れである。(中略)もちろん、利益が重要でないということではない。利益は、企業や事業の目的ではなく条件なのである。また利益は、事業における意思決定の理由や原因や根拠ではなく、妥当性の尺度なのである」

ドラッカーは、『マネジメント:課題・責任・実践』の中で、マネジメントを「組織に成果をあげさせるための道具、機能、機関」と定義しています。

今日の社会は、組織社会として極度に多元化し、経済的な財とサービスの提供、医療、福祉、教育、知識の探求から環境の保護まで、社会的課題のほとんどが専門の社会的機関に委ねられています。

こうした観点から、すべての組織を社会の機関として位置づけ、社会、コミュニティー、個人という顧客のニーズを満たすために存在しなければならないとしています。

つまり、組織が社会やコミュニティー、個人のニーズを満たすというミッションを達成し、その成果を上げるために存在するのがマネジメントだというのです。

マネジメント層に求めた3つの役割

ドラッカーは、組織を運営するマネジメント層が組織を機能させ、貢献へと導くには、

「自らの組織に固有の目的と使命を果たさせる」

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「仕事を生産的なものにして、働く人たちに成果をあげさせる」

「自らの社会的インパクトを管理し、社会的責任を果たす」

という3つの役割を果たさなければならないとします。

そして、その唯一の目的である顧客創造のために企業が持つべき機能は、マーケティングとイノベーションの2つだけだとします。

マーケティングとは、顧客のニーズを探り対応する製品やサービスを提供する機能で、イノベーションとは、顧客の新しい満足を作り出していく機能です。

この2つを有効に機能させることが、マネジメントの最重要課題だということです。

堀内 勉 多摩大学社会的投資研究所教授・副所長、HONZ

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ほりうち つとむ / Tsutomu Horiuchi

外資系証券を経て大手不動産会社でCFOも務めた人物。自ら資本主義の教養学公開講座を主催するほど経済・ファイナンス分野に明るい一方で、科学や芸術分野にも精通し、読書のストライクゾーンは幅広い。

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