"観光大国"フランスを支える意外な武器 パリでは年におよそ400回も開催

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観光客誘致にも大きく貢献

見本市は副次的な効果ももたらす。観光客誘致の重要な手段として機能しているのだ。前出のようにフランスは世界一の「観光大国」。12年に同国を訪れた外国人客は約8300万人のうち、「ビジネス目的の来訪客が4分の1程度」(フランスの観光関連業界関係者)。

見本市の開催期間は最低でも4日。出展者やバイヤー、業界関係者などの滞在日数は観光目的の訪問客に比べると総じて長く、滞在する宿泊施設にとっては“上客”だ。

しかも、彼らは家族同伴で来るケースが多い。見本市の関係者や同伴者を対象にした「オプショナルツアー」は、観光収入獲得の有力なツールになっている。

フランスを訪れる外国人客は年間約8300万人を数え

一方、課題もある。「大規模な見本市の開催期間中には宿泊場所を探すのが難しい」という不満の声が少なくないのだ。「パリにはビジネス目的の利用の多い3つ星、4つ星クラスのホテルが足りない」と見本市の関係者は指摘する。

イルドフランス地方開発局のマルゴ=デュクロ氏は「パリにあるホテルの部屋数は15万室と世界で最も多く、予約できないといったクレームはない」と話す。これに対して、モーターショーのエス専務理事は「確かにそうした問題があり、需要に追いついていないのが現状だと思う。自分もショーが終了した時点で、2年後に開かれる次のショーに備えて会場近くのホテルを予約している」などと打ち明ける。

「2020年までに4つ星、5つ星クラスのホテルで7000室以上の供給が新たになされる予定」(観光業界関係者)。フランスが「見本市大国」の座を維持し続けるには、宿泊インフラの整備が焦眉の急だろう。

松崎 泰弘 大正大学 教授

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まつざき やすひろ / Yasuhiro Matsuzaki

フリージャーナリスト。1962年、東京生まれ。日本短波放送(現ラジオNIKKEI)、北海道放送(HBC)を経て2000年、東洋経済新報社へ入社。東洋経済では編集局で金融マーケット、欧州経済(特にフランス)などの取材経験が長く、2013年10月からデジタルメディア局に異動し「会社四季報オンライン」担当。著書に『お金持ち入門』(共著、実業之日本社)。趣味はスポーツ。ラグビーには中学時代から20年にわたって没頭し、大学では体育会ラグビー部に在籍していた。2018年3月に退職し、同年4月より大正大学表現学部教授。

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