方向感のない日経平均の先行きに潜む「リスク」 いざというときの日本企業の備えはあるのか
これとは別の話で、アメリカの国務省報道官は4月6日の記者会見で、中国の人権侵害を批判し「(今は何も決まっていないが)同盟国と2022年の北京冬季五輪のボイコットについて議論したい」と述べた。
その後、ホワイトハウスはボイコット観測の火消し声明を出した。だが、基本的にアメリカ政府は中国の人権問題を批判し続けており、決定がすぐでないとしても、冬季五輪ボイコットの可能性は否定できない。
中国としては、習主席訪米の可能性が残り、北京五輪を当初予定どおりに開催できる公算があるとすれば、その2つの成功を優先させて、それをぶち壊しにするような米中対立を避けようとの動機が働く。
逆にいえば、その2つの可能性が無に帰するのであれば、中国はアメリカに対する「遠慮」をしなくなるだろう。
市場への「中国の人権問題」の影響を懸念
仮に米中対立が一段と激化した場合、日本はどうなるのだろうか。
ドナルド・トランプ前政権はアメリカ単独でも対外政策を推し進めるとの姿勢だったが、バイデン政権は同盟国との協働を重視している。今のところアメリカは同盟国に対し、「アメリカにつくのか、中国の味方をするのかなどと迫らない」と公式に表明している。だがこの先、アメリカからの圧力が強まることは十分ありうる。
アメリカ政府が迫らなくても、すでに人権問題を重視する投資家からは、日本を含めた主要国の企業に対し、中国における人権問題をどう考えているのか、態度を明らかにするよう迫る動きがみられる。
経済面では、アメリカの外需依存度(輸出額÷名目GDP)が8%程度であるのに対し、日本は14%強と高い(総務省「世界の統計2021」)。
しかも、日本の総輸出の22%が中国向け(2020年)である。加えて、今年2月の地域別輸出額で前年比プラスを記録していたのは中国向けだけだ(アメリカ向け、欧州向け、中国以外のアジア向けはマイナス。中国向けは8カ月連続のプラスだった)。
日本企業は「金銭的な儲けよりも、中国の人権問題に対する抗議の姿勢を示せ」との圧力がかかった際に、それに対応する準備ができているのだろうか。「問題が生じていても、穴に隠れて静かにしていれば、そのうち問題は過ぎ去る」という態度では済まない事態になりつつあると考えられる。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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