世界的な半導体の需給逼迫を背景に、市場に値上げの波が押し寄せている。半導体業界のサプライヤー各社は、4月から価格を10~20%引き上げるとの通知書を次々に顧客に送りつけている。
値上げはサプライチェーンの上流から始まった。シリコンウエハーの製造で世界最大手の信越化学工業は3月初め、原材料のシリコンの高騰を理由に4月1日からウエハーの価格を10~20%引き上げると発表。中国のシリコンウエハー大手の硅産業集団(NSIG)も一部の製品を値上げした。
半導体製造の中核と言えるのが、ウエハー上に微細な回路を形成するプロセスだ。ここでは台湾のファウンドリー(半導体の受託製造)大手の聯華電子(UMC)や力晶積成電子製造(PSMC)、同じく中国の中芯国際集成電路製造(SMIC)などが、2021年4~6月期からの値上げを計画している。ファウンドリ世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は、大口顧客へのディスカウントをやめて実質的に値上げした。
その次の工程であるチップのパッケージ封入や検査にも値上げの動きがある。中国の半導体パッケージング・検査大手、華天科技(TSHT)の関係者によれば、同社は2020年10~12月期以降に平均20%を超える値上げを実施した。
米政府の「ファーウェイ制裁」も逼迫の一因
半導体の需給逼迫を招いた最大の要因は、言うまでもなく新型コロナウイルスの流行だ。2020年前半に流行が全世界に急拡大するなか、半導体メーカーのほとんどは需要回復が遅れると判断、生産ラインへのウエハー投入を抑制した。ところが、年後半から予想を超えるペースで需要が回復したため、ウエハーもチップもたちまち供給不足に陥った。
新型コロナの影響を読み誤ったことに加え、スマートフォンの5G(第5世代移動通信)への移行や自動車の電動化が加速し、それらに実装される半導体の数が大幅に増えたことも需要を押し上げている。
そもそも、既存の半導体メーカーは新型コロナの流行前から増産余力が小さかった。そこに未曾有の寒波によるアメリカ・テキサス州の半導体工場の停電や、日本のルネサスエレクトロニクスの工場で発生した火災などのアクシデントが重なり、供給不足に拍車をかけた。
さらに、中国の通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)などに対するアメリカ政府の制裁が、エンドユーザーによる半導体の“奪い合い”を助長している。多数の中国企業が将来の制裁リスクを警戒し、在庫の積み増しに走っているのだ。ある業界関係者は、半導体不足は早くても2021年末まで解消せず、値上げは今後も続くと予想する。
(財新記者:屈慧)
※原文の配信は4月2日
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