日本女性の「パリ好き」の源がハリウッドの必然 住まう人たちの息づかいが伝わるフランス映画
例えばダン・ブラウンの小説を原作とした『ダ・ヴィンチ・コード』(ロン・ハワード監督、2006年公開)はパリのルーブル美術館から始まり、ルーブル美術館で終わる。美しい街並みを上から、下から、正面から、満遍なく、惜しみなく光を使い、カメラを“なめる”ように動かしクローズアップする。
ガラスのピラミッドにうつる夜景、語りかけてくる絵画たち。技術を余すところなく享受して映し出された謎めいたパリに、私たちはワクワクする。
愛とその豪奢な煌びやかさに酔いしれたいなら、ニコール・キッドマン主演、モンマルトルのキャバレーを舞台にした『ムーラン・ルージュ』(バズ・ラーマン監督、2001年公開)がてきめんだ。
『パリの恋人』(スタンリー・ドーネン監督、1957年公開)のオードリー・ヘプバーンのように、ファッション誌のモデルとしてパリへ旅立ち、パリを舞台に素敵な男性に出会って甘酸っぱい恋をしたいと願う人もいるだろう。
詩や小説が好きだったら『ミッドナイト・イン・パリ』(ウディ・アレン監督、2011年公開)なんてよだれものだろう。主人公と共に過去のパリへタイムスリップし、フィッツジェラルドやジャン・コクトー、ヘミングウェイと議論したりベル・エポック(美しい時代)時代の華やかなパリを体験したりできる。
一方、『プレタポルテ』(ロバート・アルトマン監督、1994年公開)は、やはりファッションの中心地はパリなんだと感じさせる映画だ。パリの街並みが、歴史を感じさせる堂々たる建物たちが、シックな衣装に身を包んだ華やかなファッションモデルたちが、スクリーンを通して私たちを圧倒し、私たちはその比類なき美しさに憧れ、あやかりたいと願う。
これが、私たちの感じる外見のパリの印象ではないだろうか。
芸術がベースのフランス映画
では、フランスの監督たちはどのようにパリを映し出しているのか?
哲学、文学と演劇の長い歴史を持つフランスはその血脈から「芸術」というベースをもとに映画を作り始めた。とはいえ映画が出てきた当初は、絵画や彫刻、演劇のような芸術とは違い、見世物市場で見せる娯楽や大衆的なものとしてとらえられていたようだ。
それを、シネマテーク・フランセーズ(映画遺産の保存、修復、配給を目的としたパリにある私立文化施設)の前身シネマ・アーカイヴを創設したアンリ・ラングロワを皮切りに、アンドレ・バザンなど多くの批評家たちが「第7芸術」としての地位まで推しあげたという背景がある。
アンリ・ラングロワはこれまで捨てらたり、裁断されてマニキュアの原料などにされてきた映画フィルムを保存、修復し、上映。そこにシネフィル(映画狂い)と言われるフランソワ・トリュフォーやジャン・リュック・ゴダール、アラン・レネ、エリック・ロメールなどが集い、ヌーヴェル・ヴァーグという波(1950年末〜)を起こしていった。
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