au「povoは集客装置」、店に不適切販売指示の罪 景表法、独禁法、電気通信法に違反のおそれも
このやり方は「レ点商法」にも酷似する。レ点商法とは、携帯ショップが客に対し、「動画や補償サービスなどの有料オプションに入ってくれればキャッシュバックします。後日、すぐに解約していいです」などと持ち掛け、申し込みの項目にチェック(=レ点を入れ)させ大量のオプションに加入させる手法だ。
客が解約を忘れれば、携帯電話会社には毎月オプションの料金が入り続ける。携帯電話会社にはおいしいが消費者保護の観点から問題とされ、今ではあまり見られなくなっている。だが記者が経験した「povoフック」は、代理店がKDDIの販促マニュアル通りに「au即日成約」を実行しようとした、新たなレ点商法ともとらえられる。
KDDIのpovoを使った一連の販売手法は、法律的に見てもさまざまな問題がある。元消費者庁表示対策課・課長補佐の染谷隆明弁護士は、「オンライン専用の商品を店頭で広告に使う場合には、それをわかりやすく明瞭に表示することが望ましい。店頭で契約できるような誤認を消費者に与える場合、景品表示法違反のおとり広告にあたることがある」と話す。
また、染谷弁護士は「低容量プランを望む利用者に大容量プランを販売するといった場合、『利用者にわかりやすく案内して適切なプランを勧めなければならない』と定める電気通信事業法の適合性の原則にそぐわない」と指摘する。KDDIによる「povoへの加入希望者を誘導してauの契約を取る」趣旨の代理店への指示や、大容量プランの獲得率向上を求める成績指標は、この原則に抵触するおそれがある。
「官製値下げ」が生んだ皮肉な結果
加えて、KDDIが代理店に無償でpovoの宣伝活動をさせていることも問題になりそうだ。染谷弁護士は「家電量販店がメーカーの社員に無償で販売活動支援をさせ、独占禁止法違反の『優越的地位の濫用』に当たるとされた事例がある」と話す。
前述の通り、代理店はpovoへの誘導をしてもそれ自体にメリットはない。「povoフック」がKDDIの主張する、povoの純粋な宣伝や案内を目的とするものだとすれば、それはそれで、対価を支払わず代理店に支援をさせているという独禁法上の問題を指摘されかねない。
携帯大手各社のオンライン専用格安プランの導入は、菅義偉首相の意向を受けた武田良太総務大臣を中心に政府が主導したもの。「官製値下げ」とも揶揄される。消費者の通信費負担を減らすはずだった値下げが、皮肉にも法律違反まで疑われる「povoフック」や「アハモフック」といった不誠実な営業手法を生んだといえる。
一方で、国はKDDIの大容量プラン獲得率を指標とする評価制度などは長らく野放しにしている。携帯電話という老若男女が使う重要な生活インフラで不適切販売が横行している実態に、総務省、消費者庁、公正取引委員会はどう向き合うのか。
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