退職者による秘密漏洩「泣き寝入り」で良いのか 楽天モバイル社員の逮捕事件は人ごとではない
「営業秘密漏洩における、主たる漏洩ルートは中途退職者であり、確信犯的な内部不正の減少傾向はみられなかった」
情報セキュリティ対策の普及・啓発活動などを行っている独立行政法人「情報処理推進機構」(IPA)が3月、営業秘密管理に関するアンケート調査結果を公表した。
IPAは、国内の企業1万6000社を対象にした郵送アンケートを実施、うち2715社が回答した。
秘密保持契約は6割弱にすぎない
従業員との間で秘密保持契約を締結している企業は56.6%。前回2016年の調査時の46.1%から10ポイント強の増加にとどまった。情報漏洩ルートは、中途退職者による漏洩が36.3%と最多で、前回の28.6%を上回った。
1月には、ソフトバンクの技術情報を不正に持ち出したとして、楽天モバイルの従業員が不正競争防止法違反の容疑で警視庁に逮捕されている。こうした営業秘密の持ち出しが多数報道されているにもかかわらず、IPAによると、従業員との間で秘密保持契約を締結しているのは6割弱にとどまっている。
秘密保持契約を締結している6割弱の企業でも、退職後も永久に縛ることのできる、期間を定めない契約を締結しているのは38.1%にすぎない。日本再興戦略で「世界最高の知財立国を目指す」と宣言している割には、お寒い実態だ。
警察庁によると、不正競争防止法の営業秘密侵害罪の検挙数は、直近の2020年でも22件、検挙された人数は38人。法人はわずか1件。法人は昨年以前は3年連続でゼロだった。
営業秘密の持ち出しが実際にどのくらいあるのか不明だが、IPAの調査では2715社中、約140社が漏洩の発生を認めている。検挙に至るのはごく一部と言ってよさそうだ。
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