退職者による秘密漏洩「泣き寝入り」で良いのか 楽天モバイル社員の逮捕事件は人ごとではない
情報流出先企業の責任を問うためには、刑事、民事いずれの場合もまず、持ち出された情報が営業秘密かどうかが問題となる。
営業秘密として認められるには、「厳格な管理がなされていたか」(管理性)、「営業秘密として有用かどうか」(有用性)、「一般に知られていない秘密なのかどうか」(非公知性)の3要件を満たす必要がある。
営業秘密性のハードルをクリアし、持ち出した本人が在職中に使用していたパソコンなどから持ち出した証拠が見付かれば、持ち出した本人の刑事上、民事上の責任を問うことができる。
被害企業は事実上、泣き寝入り
だが、持ち出させた転職先企業の責任を問うためには、さらに高いハードルが待ち受けている。まず、持ち出された情報が、持ち出し先に提供されたという証拠がいる。持ち出した本人の自供だけでは足りず、持ち出し先の企業のサーバーの中に、持ち出した情報が格納されていることを立証しなければならない。
さらに、持ち出した本人と共謀したことを立証しなければならない。情報を持ち出させる意図がある企業は当然、証拠を残さないよう細心の注意を払う。指示はあくまで口頭で、メールやチャットは一切使わない。持ち出しを明確に指示せず、ほのめかすだけというケースもある。
持ち出し先に民事上の損害賠償責任を負わせようとする場合は、営業秘密を持ち出された側の損害額の立証が必要になる。そのためには、持ち出された営業秘密を使って、持ち出し先の企業がどれだけの収益を上げているのかという情報が必要になる。
だが、相手方にしかない、そのような情報を被害者が入手することはほぼ不可能だ。そのため、営業秘密が流出した被害企業は事実上、泣き寝入りしているというのが実態だ。
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