レッシグ教授が考える「AIと中国」本当の脅威

「サイバー法の権威」民主主義に迫る危機を語る

もう1つの課題は、AIが個人データ利用の規制をしっかりと守っていることについて、人々が確信を持てるようにすることです。私たちの社会は、企業に法律を守らせ、違反した場合には十分なペナルティを与えるということが非常に下手です。AIが公共の価値に反していないという確信が、国民の間にしっかりと築かれる必要がありますが、そのためには、AIを使う企業を規制するよりよい方法を見つけなければいけません。

――AIが労働を置き換えることによって、現在ある職務の約半分は将来、なくなってしまうという予測があります。あなたは将来のAI社会について悲観的ですか。

ローレンス・レッシグ(Lawrence Lessig)/アメリカ・ハーバード大学ロースクール教授。1961年生まれ。アメリカ・ペンシルバニア大学卒業、英ケンブリッジ大学で哲学修士号、米イェール大学で法学博士号を取得。2016年米大統領選挙に出馬するなどアクティビストとしても活動。著書に『CODE』『コモンズ』『REMIX』『彼らは私たちを代表していない』など(写真:Jessica Scranton)

AIが社会を破壊するような発展を遂げ、ディストピア(暗黒郷)のような未来になる可能性はあるでしょう。

しかし、私はユートピア的な未来もあると考えています。AIは人生における仕事のわずらわしさの大部分を取り除くことができるでしょう。それを見て多くの人の職が失われると言うかもしれませんが、裕福な社会はベーシックインカムを導入し、人々が少なくとも健康的な生活を送るためには働くことに依存しないようにすべきだと考えます。

仕事のほとんどが機械によって行われるため、週に50時間も働く必要のない未来を想像してみると、それはより幸せで豊かな社会であるかもしれません。問題は、人間がAIのために働くのではなく、AIが人間のために働くようにすることです。そのための方法を考えていく必要があります。

最先端のAIを持つ中国の脅威

――AIと並ぶ、もう一つの民主主義への脅威として、中国の問題があります。中国はAIやIoT(モノのインターネット)を活用して、国家による監視社会を構築しました。ある意味で、あなたが『CODE』において危険な可能性として警告したディストピア的な社会を現実化させています。中国の将来についてはどう考えますか。

これは本当に難しい質問です。なぜなら、中国には政治的に非効率なものもありますが、現実として今の彼らは、統治のための並外れたインフラを持っているからです。中国はほかのどの国よりも広範囲にわたってAI技術に投資しています。それらのAI技術は比較的中央集権的な経済システムに直接接続され、経済を牽引したり強力な規制を展開したりしています。

習近平国家主席の登場以前では、指導者がシステムを腐敗させるリスクは少ないと話してきましたが、今は自信がありません。今の指導者層には社会を自分の見解に合わせようとする動機がつねにあり、社会制度が民主的な権力によってコントロールされていない危険性があります。

しかし一方で、経済や政治の社会システム内に構築されたスーパーコンピュータによるインテリジェンスのインフラによって、私たちにできないことが、彼らにはできることも認識する必要があります。

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