中国がコロナ後の世界経済を牽引できない理由 「アフター・コロナ」の本当のリスクとは何か

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だが中国が世界経済の牽引役になっているとの認識は妥当ではない、と筆者は考えている。このため、米中の政治的な緊張関係が高まることは避けられないとしても、それが金融市場にとっては脅威にならないと予想している。

これまで、中国は世界的な製造業生産の急回復の恩恵を大きく受けた。ただ、中国からの輸出好調には、マスクなどの新型コロナ関連の特需が続いていたことも大きかった。今後ワクチン接種が進み、新型コロナが徐々に収束に向かうなかで、感染症関連の輸出需要はこれから減少していくだろう。

そして、世界的な製造業の急ピッチな回復をもたらしたのは、新型コロナショック後の経済復調局面において、アメリカでモノの消費が大きく拡大したことである。これが、本質的に重要な要因だと筆者は考えている。

戦後最大規模のアメリカ財政政策の効果とは?

アメリカでは、戦後最大規模の財政政策が2021年にかけて約2年間にわたり発動されているが、財政政策発動で民間に行きわたったマネーは、貯蓄に回った部分もあるが、一定程度は個人消費を押し上げた。そして、新型コロナ禍で、サービス部門の消費活動が強く制約を受けたため、アメリカ人の消費の使い道は自ずとモノに集中する。このため、大規模な財政政策の行き先が、アメリカ人によるモノへの消費を、過去に見られない規模で押し上げたのである。

なお、財政政策の後押しとワクチン接種の進展で、2021年のアメリカの経済成長率は前年比約プラス6%と1984年以来の高成長率となり、新型コロナによって大きく落ち込んだ2020年の大幅な落ち込みのかなりの部分を取り戻すと筆者は予想している。

つまり、中国経済の一足早い成長は、新型コロナの早期封じ込めに成功したことなど同国の政策運営が多少は影響したが、それが主たる要因とは言いがたい。経済危機に大規模な政策対応を行った、アメリカでの消費需要がモノに集中したことで、世界的な製造業の早期回復が実現して、その恩恵を大きく受けたことが中国経済の回復の主因と筆者は考えている。

これは、アメリカと中国の経常収支の動向からも説明できる。アメリカの「経常赤字」は2020年10~12月期にGDP比率3.5%と、2008年10~12月以来の水準まで拡大した。一方、中国の経常収支は、2020年初頭には黒字赤字ほぼニュートラルだったが、同年末までにはGDP比2%前後まで「経常黒字」が拡大した。

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