そのハラル、大丈夫?マーク発行団体が乱立 一歩間違えば国際問題に発展しかねない
しかも、その存在に疑義をはさむことは“人の信仰心を疑う”ことになり、ほかのムスリム団体が問題にすることはできない。輸出であれば、各国の輸入規制があるうえ、ハラル認定機関が自国に輸入できるものは何か厳密に審査しているので、問題は起こりにくい。
厄介なのは国内だ。この数年でハラルビジネスがカネになるとみて、ハラルマーク発行団体が乱立。かつて1ケタだった団体数が、今や80とも90ともいわれるほどに増大している。イスラムの教えに厳格な団体もあれば、明らかにブームを当て込んで設立されたとみられる団体など、まさに玉石混淆状態なのである。
飲食店の店頭にハラルマークを貼ることは、豚肉、アルコールを置かないのはもちろん、鶏肉や牛肉もイスラム教の戒律に従って処理している、と約束すること。さらに食材がハラルでも、調理方法がハラルでなければ、それはハラルな食事とならない。野菜は基本的にハラルだが、過去に豚肉を切った包丁で野菜を刻むだけで、その野菜はハラムになる。
「混ざり合わなければ問題ないと聞いています」。アルコールを提供している、あるハラルレストランの従業員は言い切った。提供しているのは缶ビールで、調理過程で食材に混入するおそれはない。しかし、アルコールそのものがハラムであるうえ、使用しているビールのコップをほかの食器と一緒に洗っている。
「旅行中ならば、ある程度戒律を逸脱しても、大丈夫だと聞いている。だから厳密なハラルフードでなくてもいいはず」と、決めつける飲食業者もいる。これに対し、「これくらいいいだろうと提供者が判断するものではない。食べる人の判断に任せるべき」と、日本ハラール協会のレモン史視・理事長は憤る。
団体によって基準はまちまち
むろん、ムスリムの中には日本に来て豚肉を食べたり、アルコールを飲んだりする人もいる。信仰を厳密に守るかどうか、あくまで個人に裁量の余地を残すべきなのだ。
たとえば日本のしょうゆ。伝統的な醸造方法で造ると、発酵過程でアルコールが発生する。自然発酵のアルコールなら、世界で2番目に戒律が厳しいといわれるマレーシアでも、ハラルと認められる。
一方、醸造過程で、アルコールを添加するしょうゆもある。加えるのは人工的なアルコールで、マレーシアやシンガポール、インドネシアなど主だったイスラム圏でハラムとなる。
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