いすゞと日野、両社を結んだ「トヨタの思惑」 日本のトラック業界にも迫る電動化の波

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また、トヨタとしては、将来的な自動運転社会の実現も睨んでいる。自動運転は同じルートを走ることの多い貨物トラックのほうが乗用車よりも導入しやすい。まずはトラックでの社会実装で自動運転技術に磨きをかけ、そのノウハウを乗用車での展開に生かしたい考えだ。

「競争だけでなく協調も必要」

通信領域の「コネクテッド」も協業の大きなテーマだ。トラックメーカーは車両の情報通信端末から走行記録や故障感知などのデータを集め、運送事業者に車両管理情報として提供している。いすゞ、日野はそれぞれの車両データを顧客企業が一元管理できるよう2社で規格を統一するほか、トヨタの協力を得て新たなサービスも検討する。

「運送業界は今、深刻なドライバー不足に直面している。輸送の効率化も大きな課題だ。個社を超えたコネクテッドの連携によって、ドライバーの負担軽減や積載効率の向上にも貢献したい。そのための新たなサービスを一緒に考えていく」(日野の下義生社長)

国内のトラックメーカーは4社。ボルボ・グループ傘下で4位のUDトラックスはいすゞによる買収が決まっており、2021年の上半期に買収手続きが完了する。ダイムラー傘下で3位の三菱ふそうトラック・バスのみが今回の提携から外れている形だが、いすゞの片山社長は「この協業に志を同じくする企業があれば、つねにオープンな姿勢で臨んでいく」と説明した。

豊田社長は「もっといいモビリティ社会をつくるには競争だけでなく、協調していくことがますます大切になる」と話す。日々の物流に欠かせない貨物トラックのCASE対応を目的とした今回の3社大連合。果たして、提携をどこまで実のあるものにできるか。具体的な成果が早期に問われる。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年10月から東洋経済編集部でニュースや特集の編集を担当。

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渡辺 清治 東洋経済 記者
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