いすゞと日野、両社を結んだ「トヨタの思惑」 日本のトラック業界にも迫る電動化の波

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

世界的に環境規制が強まる中、トラックメーカーにとっても電動化対応は喫緊の大きな課題だ。貨物車両は乗用車よりも1台当たりの平均走行距離が圧倒的に長く、CO2排出量で見ると、国内で自動車が排出するCO2の4割近くを占める。

日本政府は昨年末、将来的なカーボンニュートラルの実現に向け、35年までに乗用車の国内新車販売をすべて電動車にする国家目標を設定した。貨物車両については運送業界への影響に配慮して別枠で議論されているが、最終的には乗用車に準じた目標が課せられる見通しだ。

トラック電動化にコストの壁

しかし、トラックは乗用車に比べて電動化が遅れているうえ、多くの荷物を積んだ重い車両を長い距離走らせるだけのパワーや電池などが必要となるため、電動車両のコストが非常に高くつく。現行のディーゼル車よりも車両価格が大幅に跳ね上がれば、ただでさえ厳しい運送事業者の経営を圧迫する。

トラックもいよいよ電動化が始まる。写真は、いすゞ自動車が2019年に公開した小型の低床EVトラックのコンセプト車両(記者撮影)

トヨタにはEVやFCVの技術がある。それを最大限に活用しつつ、3社が知恵を出し合い、電動トラックの車両コストを下げるのが今回の提携の一番の狙いだ。いすゞの片山社長は、「電動化にはコストやインフラといった課題があるが、3社で力を合わせれば大きなイノベーションを起こせる」と提携効果に大きな期待を寄せる。

トヨタは近年、乗用車の同業他社と資本提携を伴う協力関係を結び、CASEの技術開発で仲間を増やしてきた。今回の提携で商用車にも対象を広げた形だ。いすゞにFCVなどの基幹部品を販売できれば、トヨタ側にもメリットはある。 

自動車産業に詳しいブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生シニアアナリストは、「デンソーやアイシン精機などトヨタグループのサプライヤーは電動化関連の部品を数多く手がけているので、いすゞとの取引が広がれば、グループ全体での競争力強化にも繋がる」と指摘する。

次ページコネクテッドで新サービスも
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事