リーダーシップに必要なのは理性より楽観主義

心理学と脳科学に見るリーダー像のつくり方

しかし、人間が完全に合理的でないことは、古くは、ノーベル経済学賞を受賞したハーバート・A・サイモンの「限定合理性」の考え方からも広く知られている。経済学では、古典的に、合理的な計算を行って自分の利益を最大化するように動くと考えてきた。

「損得勘定」とか「算盤ずく」というやつである。しかし実際には、いつだって計算に基づいて行動するような人はいない。そんな人がいれば、「コスパばっかり言うな!」と周りからディスられる。

最近バズっている行動経済学では、われわれがいろんな選択をするにあたって、どれほど合理的ではないのかを熱心に研究している。ホモ・エコノミクス(合理的な経済人)を信奉してきた同じ経済学徒が、理性に反旗をひるがえしているようにも見える。

リーダーシップもしかり。リーダーたるもの、物事を理性で片づけてはならない。それはなぜか? 理性が勝るはずのビジネスで、どうして理性で片づけてはならないのか?

モノや金といった目にも見えるし、数値化もしやすい資源だけを扱っているのであれば、理性で判断してもかまわないかもしれない。ただし、現代のビジネスはそれでは足りない。

1人ひとりのニーズを先読みして、きめ細かなサービスやベストな商品をレコメンドするとか、商品やサービスを通して顧客にわが社を好きになってもらう(ファン・コミュニティーをつくる)とか、リレーションシップを通してお金で買えない価値を提供する。

あるいは、知識や情報や関係といった目に見えない資産を使って、ビジネスを優位に導いていくことが求められている。これをインタンジブル・アセット(無形資産)と呼んでいる。

競争力を生み出す組織のコンピタンスは、ヒトが握っている。だから、理性を前に出せば角が立つし、人間がかかわっている以上、相手の感情にも配慮する必要がある。単に知能指数(IQ)がものをいうわけではない。

ダニエル・ゴールマンが広めた「心の知能指数(EQ)」という言葉は、もう使い古されて時代遅れだが、理性だけでは語れないものだ。リーダーシップにもそれがあてはまる。

リーダーシップと脳の深い関係

よきリーダーはバランスの取れた脳の使い方をする。

もともと人の認知はすっきりとは割り切れないものだが、感性と理性を分けて考えようとするのが、学問の習性でもある。二重過程理論(デュアル・プロセス・セオリー)と呼ばれる一連の考え方によって、2種類の認知の働き方がまとめられている。

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