資生堂、美容部員が奮い立つキャリアの“見える化”《ものすごい社員教育》
そして、美容部員から管理職を育成するため、08年エコール資生堂内に設けられたのが、「美容マネジメント研修」。今までも美容部員から管理職になるケースはあったが、美容部員は一対一で顧客応対するのが仕事。組織の中でマネジメント能力を育成する機会は少なく、その登用にも限界があった。
そこで同研修では、論理力・課題設定力、マネジメント力、リーダーとなる「高い志」を徹底的に教え込む。初年度の受講生は全国から集めた選りすぐりの24人だ。
研修には社長、副社長、専務のトップ3が現場に足を運んで講演。前田新造社長は「もっと経営サイドに来て活躍してほしい」と鼓舞する。厚生労働省出身で働く母親としてのキャリアを持つ岩田喜美枝副社長は、自らの体験談を交えて不安の解消に努め、経営層総出で管理職志向を後押しする。
また、昨年10月に高度専門美容職を新設。それまではどんなに美容技術が卓越していても、役職面では横並びだった。前出の管理職になると管理業務に徹せねばならず、美容技術を発揮できる機会はほとんどなくなってしまう。
高度美容専門職では、アーティストとしてキャリアを積めるうえ、待遇面でも管理職と同等を保証。モデルケースとして登用した岡元美也子氏と西島悦氏はすでにメディアで活躍。そもそも「化粧をしてあげることが好き」という理由で美容部員になる人がほとんどのため、やる気を維持してもらい、昇格の暁には会社お抱えのトップアーティストとして活躍してもらう狙いがある。
今年4月、高度美容専門職の育成のために、エコール資生堂内に美容大学院「資生堂ビューティーアカデミー」を開校。新入生はメーキャップアーティストなど20人弱で、最長3年の課程を修了した中から年に1~2名が登用される。日常業務の傍ら、高度美容専門職に同行するほか、美容技術や理論を受講する。