香港に中国流民主制、「暴走」はどこまで続くか

共産党主導の「法治」、見えぬ西側諸国の対抗策

10年ほど前、筆者が北京大学で講演した時、約200人の学生に民主主義をどう思うか聞いたことがある。「民主主義が今の世界で必ずしもうまくいっているとは思えない」「中国の政治制度の方が民主主義国よりも経済成長などで大きな発展を実現させている」などと民主主義に否定的な意見が相次ぎ、肯定的な意見はわずか2人だった。

習近平主席は講演などで「中国は西側の憲政、三権分立、司法の独立などという道を歩まない」「他国の制度を模倣する必要はない」と繰り返し主張し、中国の歴史や国情などを反映した「中国の特色ある社会主義法治の道を歩む」と強調している。

「中国流法治」の意味

中国の言う「法治」や「法の支配」という言葉の意味も西側とはまったく異なる。西側民主主義国における法治は、一般的に国民が守るべきルールというだけでなく、国家権力を法律で拘束するという権力抑制の意味が込められている。

権力者はしばしば暴走しかねない。だから法律によって被治者の権利や自由を保障するという立憲主義に基づいた考え方だ。

ところが中国流の「法治」「法の支配」は正反対である。中国共産党が最高権力であり、法律は共産党が統治するための道具である。国民や企業はすべて法律に従わなければならない。そして、習近平主席が言及したように司法の独立は存在せず、裁判所の判断も共産党の方針に従わなければならない。それに反すると、非愛国者となる。つまり中国流法治とは、共産党主導のもとで作られた「法律による支配」なのである。

1990年代、中国は鄧小平氏を中心に「自分の力を隠して蓄える」という意味の「韜光養晦」(とうこうようかい)という言葉を対外政策の中心に置き、腰を低くして西側先進国の技術などを見習う姿勢を示していた。西側諸国も経済発展とともに中国は民主主義的制度を取り入れていくだろうと期待した。しかし、その見通しは完全に見誤っていた。習近平主席のもと、中国はますます独自の路線を突っ走っている。

その背景には鄧小平氏が1978年に打ち出した改革開放路線の成功がある。2008年のリーマンショックでは先進国に先駆けて、いち早く経済の回復に成功。コロナ禍の経済への影響も最小限にとどめ、2020年は主要国で唯一プラスの経済成長を遂げた。

2030年ごろにはGDPがアメリカを上回ると予測されている。つまり中国は今、自分たちの制度が西側の先進民主主義諸国以上に成果を上げ、西側諸国との制度間競争に勝利できるという自信を強めているのだ。

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